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巨人は高橋由伸をこのまま終わらせてしまっていいのか?

文春野球コラム ペナントレース2018

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巨人は高橋由伸をこのまま終わらせていいのか?

 しかし、巨人軍は本当にあの高橋由伸をこのまま終わらせてしまっていいのだろうか? 

 だって、アメリカにいる松井秀喜は今はほとんどヤンキースの人間だし、43歳の由伸も球団が何らかのポストを用意して再登板のチャンスを、ってそうシナリオ通りに上手くいくのか? 小宮山悟が早大野球部監督に就任するご時世、いつか由伸の慶大監督も実現するかもしれない。なんか似合いそう……じゃなくて、そうなったら巨人はゴジラ松井とプリンス由伸の “地上波中継時代最後のスーパースター”たちを同時に失うことになる。

 それはもちろんプロ野球を興行として考えた時に大きなマイナスだし、現場の指導者に“空白の世代”が生まれてしまう。24番が去れば、盟友の井端・二岡両コーチもユニフォームを脱ぐ可能性が高い。今の巨人は選手だけじゃなく、指導者の世代交代も必須なのである。よく観客は「若手選手を我慢して使え」と言うが、時にフロントも「青年監督に我慢する」ことは重要な気がする。軽いよ、引退の時も監督の終わり方も由伸の扱いが軽い。

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高橋由伸をこのまま終わらせてしまっていいのだろうか? ©文藝春秋

 今回の記事を書く際、自分が今一番見たいものはなんだろうかと考えた。答えはシンプルに「由伸監督の初V胴上げ」だ。送別じゃないよ、日本一達成の胴上げ。だって、もう飽きるくらい見た原監督ならその光景がすぐ想像できる。でも、由伸さんの場合は読めないじゃん。優勝して、胴上げされて、クールな男がどんな表情するのか? どう笑うのかとかさ。

 暗黒期のエースみたいに孤軍奮闘を続ける菅野が胴上げ投手となり、相棒・小林と抱き合い、そこにキャプテン坂本や4番岡本が駆け寄る。長野がいて、亀井がいて、若手がハシャイで、みんなで背番号24を歓喜の胴上げ。それを輪の外からニコニコしながら見つめる、上原と阿部慎之助みたいなさ(10.8決戦の落合と篠塚風)。もちろん東京ドームレジェンズシートのゲスト解説は、なんだかよく分からないけど拳を振り上げて祝福する村田修一だ。

 苦労の果てに由伸監督が歓喜の涙を流すハッピーエンドの大団円。そんな未来と引き換えに、この数シーズンがあったなら充分納得できる。心からそう思う。でも、来年がないなら、もう胴上げチャンスは今季リーグ3位に滑り込んでのCS出場、下克上日本一しかない。巨人ナイン、ここで意地見せずにいつ見せるんだよという話だ。なんだかんだ、この3年間、ボロボロの巨人をボロクソ言われながら根っこで支えていたのは高橋由伸じゃねえか。しかも、己の現役生活と引き換えにだ。その事実は忘れないでいたい。

 97年のドラフト以来、スター選手、監督として計21年間も俺らは背番号24を追ってきた。つまり、2019年シーズン、21世紀に入って初めて巨人ファンは球場で「高橋由伸のいない巨人軍」を見ることになる。

 そこに、いったいどんな未来が待っているのだろうか? 

 See you baseball freak……

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