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MVPは浅村か山川か? 西武が貫いた「最後までお客さんを帰さない野球」の魅力

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/06

 10年前同様、目の前の試合に敗れ札幌で優勝が決まった西武。主将・浅村栄斗が言う「試合に勝って、マウンド付近に集まって胴上げというイメージを描いていました」が一番盛り上がるパターンだが、それはCSファイナル、日本シリーズで果たしてもらいたい。試合後に行われた祝勝会では広島と同じく優勝記念Tシャツ、キャップが用意されていた。もし逸していたらお蔵入りになるが、どの時点で作成ゴーサインが出たかは分からない。

 じつは、1989年の「ブライアントの4連発」でペナントを逃した時、リーグ優勝記念腕時計がお蔵入りしたことがある。時計の場合は成型に時間を要するため長めの準備期間が必要だったのだ。その「幻の腕時計」、私の手元にはないが持っている人間は存在するはず。でも、公に見せびらかす訳にも行かないので、個人の密かな楽しみか。その点、繊維モノのほうが時計より簡単なので作成計画は立てやすいだろう。

 それにしても、選手が着用したあのビール漬けになったTシャツとキャップはそのまま廃棄されたのか、洗濯して保管しているのか、ちょっと気になるところだ。ファンなら、よだれが出るほど手に入れたい代物だから。記念グッズとして新品を購入するしか手段はないが、あの「使用済み」をネットオークションにかけたらかなりの人気商品になるのは間違いないが、モラルに反するのでダメ。

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20年前のリーグ優勝記念キャップ ひさし部分が革製のためビールかけには不向き

「最後までお客さんを帰さない野球」を貫いての優勝

 今季は球団が所沢に移転して40周年のメモリアルイヤー。それと、西暦の末尾に「8」がつく年度はリーグ優勝を決めているので、開幕前は戦う当事者はそれなりのプレッシャーはあったと思う。しかし、シーズンが始まれば頭から離れるもの。開幕8連勝の勢いと、良い形で表れた。開幕日は他の2チームの勝利で「同率首位」も、2戦目から首位街道をひたすら走り続け優勝を決めた。

 辻発彦監督が指揮をとって2年目。山川穂高、源田壮亮、外崎修汰らを我慢して使い続けた「辻チルドレン」の働きは大きい。中村剛也、エルネスト・メヒアの調子が上がらないと見るやスタメンから外す英断。過去の実績や名前にとらわれない姿勢がブレない。普通、球団フロントに気を遣い、年俸「5億円」や「3億円」の選手をベンチに置いておくことへの決断は難しい。しかし、それによって他の選手たちのチャンスになり活性化も進むものだ。

「最後までお客さんを帰さない野球」を掲げ、諦めない姿勢を貫いた。それを象徴する試合が4月18日の日本ハム戦(メットライフドーム)だ。8回表を終了して8対0と日本ハムのリード。詳細は割愛するが8回ウラに7点を返し1点差に。そして、9回ウラの逆転サヨナラ勝利で帰路につかなかったファンに大満足感を与えた。この試合も、シーズン通してもそうだが誰もが「打ちたい、打ちたい」という気持ちを抑え、四球を選んでつなぐ野球を実践したのだった。100三振以上の選手が6人。これは、バットを思い切り振る時とボールをしっかり見極める時の状況が良く分かっているからの現象ともいえるのではないか。

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