昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

樹木希林さんが「全身がん」でも長く活躍できた3つの理由

2018/10/02

 9月30日、国民的女優の樹木希林さん(75)の葬儀と告別式が執り行われました。私が樹木希林さんのことを認識したのは中学1年生のときだったと思います。郷ひろみさんとのデュエット曲「林檎殺人事件」がヒットした頃でした。

 なんでこんなおばさん(ごめんなさい)が、男前のアイドル歌手と踊っているんだろうと不思議に思っていました。あれからもう40年も経つんですね。それからずっと第一線で活躍し続けて、すごい女優さんでした。

36年ぶりに郷ひろみさんとデュエットを披露した樹木希林さん(2015年) ©時事通信社

 樹木さんは2005年に乳がんの手術を受け、2013年には「全身がん」であることを自ら公表し ました。しかし、それからも変わる様子なく、テレビや映画で元気な姿を私たちに見せ続けてくれました。

 医学的には「全身がん」という概念はありませんが、樹木さんのがんは腸、副腎、脊髄など、会見当時ですでに13ヵ所も転移が見つかっていたそうです。なぜ、がんを患い、しかも全身にがんが広がっていたにも関わらず、これほど長い期間活躍できたのでしょうか。

 もちろん、進行が比較的緩やかな性質のがんだったことが一番の要因だと思います。ただ、樹木さんの生き方を見ていると、それ以外の理由もあったのではないかと思うのです。たとえば樹木さんは生前、「ピンポイントの放射線治療で、体に影響する大きながんは消えている状態です。小さなのはまだあると思うし、それがいつまた大きくなるかはわかりませんけれど、とりあえず今は、生活の質にはまったく変化がありません」(文藝春秋2014年5月号「樹木希林独白 全身がん 自分を使い切って死にたい」)と語っていました。

2013年、日本アカデミー賞でがんを告白 ©文藝春秋

痛みやしびれを和らげる放射線治療

 放射線治療は「手術」「薬物療法」とならぶ、がんの三大療法の一つに数えられています。どのように使われているのか、国立がん研究センターが運営するサイト「がん情報サービス」を見てみましょう。

「放射線治療は、がんを治すことを目的として単独で行われることもありますが、薬物療法(抗がん剤治療)や手術などのほかの治療と併用して行われることもあります。手術との併用では再発を防ぐために手術の前後に行われたり、膵臓がんなどでは手術中にがんに放射線を当てることもあります(術中照射)。このほか、骨に転移したがんによる痛みを和らげたり、神経を圧迫してしびれや痛みの原因になっているがんを治療するときにも行われます」(国立がん研究センター「がんになったら手にとるガイド」放射線治療のことを知る)

 樹木さんが受けた治療がどのような内容だったか詳しくはわかりませんが、がんによって生じる痛みやしびれが、放射線治療によってうまくコントロールできていたのかもしれません 。それが生存期間にもいい影響を及ぼした可能性があります。

 とくに放射線治療は、骨転移の痛みを和らげるのに効果が期待できるのですが、放射線腫瘍医(がんの放射線治療の専門家)や緩和ケア医によると、放射線をかければよくなる可能性があるのに、主治医の理解が乏しいために治療を受けていない患者さんも少なくない と聞きます。がんによる痛みやしびれに悩まされている人は、主治医か放射線腫瘍医に放射線治療ができないか聞いてみるといいかもしれません。