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2018/10/03

本来の免疫機能が、がんを攻撃してくれる

 本来なら、免疫系はがんを外敵としてきちんと識別し、攻撃する能力を十分備えている。それにもかかわらず、がんが生き残るのは、免疫系の攻撃を巧みにかわす仕掛けを持っているからである。がんはPD-L1なる分子を放出してブレーキを踏み、免疫系の攻撃をストップさせるのだ。

 しかしもしあらかじめPD-1の働きを止め、ブレーキを踏めないようにしておけば、免疫系はその働きを無効化されることなく、がんを攻撃してくれるはずである。こうした発想に基づく薬が、免疫チェックポイント阻害剤(図では「ニボルマブ」)である。

 ©文藝春秋

抗がん剤が効かない理由

 その成功は、従来の抗がん剤がなぜ効かなかったのかも明らかにしている。

「抗がん剤を投与すると言っても、がん細胞を一気にすべて殺すほどの量を入れたら、その患者の生命維持にとって重要な細胞までやられてしまいます。だから、ほどほどに入れざるをえない。すると、ちょっと生き残ったがん細胞の中から抗がん剤に耐性を持つものが、ある頻度で出てくるわけです」(文藝春秋2016年5月号)「がんを消す免疫薬の真実」)

 抗がん剤はたしかにがん細胞の数を減らす。しかしわずかに生き残ったがん細胞が再び免疫系の攻撃のブレーキを踏み、数を増やすのである。

 もちろん免疫系の働きは人それぞれなので、そのブレーキを解除しても、十分にがんを攻撃できない場合もある(実際、免疫チェックポイント阻害剤が効かない人もいる)。したがって従来タイプの抗がん剤にも活躍の余地はあるだろう。

 いずれにしてもオプジーボなど免疫チェックポイント阻害剤が、がん治療に革命を引き起こしたのは周知の通りで、本庶氏のノーベル賞受賞は当然である。

 しかし、本庶氏からゴルフの時間が奪われないことを願いたい。何しろ、自分の研究成果によって人々が救われ、ゴルフ場で感謝の言葉をかけられることのほうが、科学者最高の名誉であるノーベル賞の受賞よりも嬉しいとおっしゃっているのだから。

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本庶 佑(著), 立花 隆(著)

文藝春秋
2018年10月2日 発売

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