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2018/10/09

祖母からもらったぬいぐるみの“ボン吉”

──染五郎さんは妹の薫子さんと二人で「犬丸座」という人形劇も自宅で上演されていて、「松本金太郎」時代にすでにオリジナル脚本『ぼんとボン吉』も自分で書かれていますね。主人公はお祖母さま(白鸚夫人・藤間紀子さん)から3歳のときにもらったぬいぐるみの「ボン吉」です。

染五郎 ボン吉は、小さな時からずっと一緒にいて、自分にとっては家族です。名前は祖父の家で飼っているシーズーのボンからつけました。自宅でも歌舞伎座でも、いつも一緒です。

──六代目の中村歌右衛門さんも晩年までパンダのぬいぐるみを大切にしておられました。お母さま(幸四郎夫人・藤間園子さん)のインスタグラムにも、ボン吉たちがいつも登場していて、みんなで家族同然に可愛がっている様子が伝わってきます。装置も、演出も兄妹二人で全部こなしていますが、お父さまはあまり手伝わないのですか?

染五郎 そうですね、気が向くとたまに……くらいですね(笑)。でも、父は、歌舞伎座の小道具さんから歌舞伎座で実際に使っている絵の具や紙吹雪を持って帰ってきてくれましたし、スモークマシーンも誕生日にプレゼントしてくれました。煙が出るシーンで、最初は加湿器を使っていたのですが、パワーは少ないし、水滴はつくしだったので、嬉しかったです。欲しいって言ったわけではないんですが、多分、父が欲しかったのだと思います(笑)。

「染五郎13歳、『ハムレット』を読む」のアフタートークでマイクを握る染五郎さん 写真提供:早稲田大学演劇博物館 禁無断転載

今まで誰もやっていなかったことをやりたい

──お父さまも、高校生の頃から長年あたためてきた阿弖流為(アテルイ)の物語を最初は劇団☆新感線の「アテルイ」として、一昨年には歌舞伎NEXT『阿弖流為』として上演する夢を果たされていますから、染五郎さんの夢を見る気持ちを大切にしてくださっているのでしょうね。

 お祖父さまは『ラ・マンチャの男』などのミュージカルからシェイクスピア劇、現代劇、『黄金の日日』などの大河ドラマまで歌舞伎の枠を超えて活躍してこられましたし、「市川染五郎」を36年間名乗ってきたお父さまも、現代劇、映画やテレビへの出演、歌舞伎初のラスベガス公演やフイギュアスケートとの共演など、常に新しいことに取り組まれてきました。染五郎さんを見ていると、高麗屋に流れる「挑戦するDNA」を感じます。これからは、どのようなことに挑戦してみたいですか?

染五郎 将来は、猿之助のお兄さんみたいに、自分で作った歌舞伎を上演したいと思っています。実は、一昨年、はじめて「弥次喜多」(『東海道中膝栗毛』の弥次喜多シリーズ)に出させていただいた後、「弥次喜多」みたいな道中もので殺人事件が起きるストーリーを自分で考えて、台本を書き始めていたんです。そうしたら、去年の「弥次喜多」が歌舞伎座で殺人事件が起きる『歌舞伎座捕物帖』で、すごくビックリしました(笑)。やはり、自分で新しいものを作りたいと思ったので、イチから書き直しになりました。

──そういうところもお父さま譲りですね(笑)。

染五郎 今年の夏の「弥次喜多」では、宙乗りをやらせていただきましたが、これも江戸時代からあって、猿翁のおじさま(三代目市川猿之助)が復活させたものです。猿翁のおじさまは、身体から煙が出る仕掛けもなさっていて、こんなお芝居があったらいいなぁとか、こんな仕掛けがあったらおもしろいなぁと思っていると、もう大先輩の方々が作っていらっしゃる。本当に歌舞伎ってすごいと思います。

 でも、できれば、今まで誰もやっていなかったことをやりたい。将来、マジックを取り入れたものや、人間の錯覚を利用した照明をできないかな、と考えています。アーティストの方に作曲もしてみたいとも思うし……夢はいろいろあります。

──歌舞伎の未来は明るいですね。この年末は、新しい『連獅子』と『勧進帳』に出会えるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。

いちかわそめごろう/2005年3月生まれ。七代目市川染五郎の長男として東京都に生まれる。07年、歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見え。09年に初舞台を踏み、四代目松本金太郎を襲名。18年1月、『壽 初春大歌舞伎』で八代目市川染五郎を襲名。37年ぶりの高麗屋三代同時襲名を果たした。

INFORMATION

南座発祥四百年・南座新開場記念「吉例顔見世興行」
2018年11月1日~25日
『連獅子』は「昼の部」、『勧進帳』は「夜の部」で上演される。10月15日より予約受付開始。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kyoto/play/560

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