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佐久間 文子
2016/11/24

【著者は語る】心して嫌われないように生きていかなあかん

『崑ちゃん ボクの昭和青春譜』 (大村崑 著)

source : 文藝春秋 2016年12月号

genre : エンタメ, 読書

大村崑氏

「崑ちゃん」の愛称で親しまれてきた昭和の国民的スターがこれまでの人生を語りおろした。

「前々から(妻の)瑤子さんにいろんな話をするたび、『そんなに面白い話、メモしといて本を書いたらどうですか』と言われてたんです。タレントが本なんて、という気持ちがあったんですけど、雑誌の取材で来たライターの小泉カツミさんが面白い人で、ビビっと話が合(お)うて、『本にしようか』となりました」

「オロナミンC」の看板でおなじみの笑顔はいまも変わらないが、御年八十五歳。機械工業学校を卒業後、キャバレーのボーイ、司会業をへて、大阪・北野劇場のコメディアンになり、テレビの草創期に「やりくりアパート」「番頭はんと丁稚どん」「とんま天狗」などの軽演劇で全国区の人気を得る。来年で芸能生活は六十年になる。

 本書で語られる顔ぶれもすごい。芦屋雁之助、ミヤコ蝶々、江利チエミ、高倉健、美空ひばり、森繁久彌、渥美清、榎本健一……。鼻メガネでよく間違えられたという三木のり平は、「とんま天狗」で父親役を演じてもらったことがある。

「人と目を合わせて話せないぐらいシャイな人なんですが、お酒を飲むと変わるんです。大阪・今里のお茶屋で、芸妓さんが先生に『崑ちゃん』って言っちゃったんですね。『俺は大村崑じゃない!』って屋根に上って走り出して」

 後日、謝りに行くと、「鼻メガネは君に譲るよ」と言われたという。

 人気絶頂期に、広告代理店の好感度調査の資料を見せてもらったことがある。

「喜劇人の東の一位がぼくやったんですけど、『好き』が多くて『どちらでもない』が少しあって、『嫌い』がほとんどなかった。珍しいことなんです。これだけ好きになってもらってるんやから、心して嫌われないように生きていかなあかんなと思いましたね」

「白熱」のジェイムズ・キャグニーに憧れていたが、それからは悪役の依頼が来ても断ったそうだ。

 本書では「ブラック・レイン」で高倉健が演じた刑事役のオーディションを受けたことや、恩人でありのちに確執が伝えられることにもなった脚本家・花登筺(はなとこばこ)への思いも明かされている。

「喜劇人は話を盛るでしょ? この本は盛ってない。自分でもえらいなあと思うし、そういう正直さがあるから喜劇の神様も守ってくれてるんじゃないかと思うんです」

崑ちゃん ボクの昭和青春譜

大村 崑(著)

文藝春秋
2016年9月13日 発売

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