昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

『有吉の壁』は見た後に何も残らない、でもまた見たくなる理由――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

『有吉の壁』(日本テレビ系)

有吉弘行 ©共同通信社

 こんなにも体感時間の短い1時間はなかなかない。不定期に放送され10回目を迎える『有吉の壁』。とにかく笑いっぱなしだった。番組の代名詞といえる企画が「一般人の壁」。街の様々な場所で芸人がオモシロ一般人に扮し、MCの有吉弘行を笑わせれば「クリア」というもの。今回の舞台はある大学のキャンパスだ。

 合格発表を待つも、合格者が書かれるはずの紙には何も書かれておらず「ゼロ!? 白い!」と叫ぶ男、カメラを向けられることに気づくとそれから逃げるAP(アシスタントプロデューサー)、弁当屋に扮して女子大生を盗聴する先生とそれを注意しながらも冤罪で捕まる学生、文化祭実行委員たちに過剰に警護される有名人、亀甲縛りされた男をデッサンしながら「動かないでって言ってるでしょ!」としばく女、テニスボールに驚き盛大に失禁してしまう男、ゾンビから逃げ惑う男にドアを開けてあげる優しいゾンビ……と活字にしてもいまいち伝わらないであろうシチュエーションをつくりあげ、ボケまくる芸人たち。

 さらに今回は、ある有名人が入っている「お助けガチャ」が用意され、その有名人とコラボネタもできるようになった。出てきたのは天龍源一郎やトランプマン。天龍は獣神サンダー・ライガーのマスクをかぶった男と女子大生たちと「王様ゲーム」に興じ、王様になるも滑舌の悪さでその指示を聞き取ってもらえない。トランプマンは「金出せや!」とカツアゲされ、ひたすらトランプを出し続け「トランプちゃう!」とツッコまれる。

 徹頭徹尾くだらない。それに対し、有吉が大笑いしながら「クリア!」と判定していくのだ。けれど、「クリア」したからって、なにかをもらえるわけでもない。それどころか、このコーナーを“クリア”し、チャレンジが終わるわけではない。芸人たちは時間が許す限り、ひたすらボケ続けるのだ。こんなにも自由に自分の好きなお笑いができることの喜びを爆発させるように。

 優勝者に選ばれたのは、奇しくも前日行われた『キングオブコント』で惜しくも王者を逃したチョコレートプラネット。「クリア」しようが「優勝」しようが、賞金も権威もない。けれど、その表情は充実感に満ちていた。見た後、何も残らない。役に立つ情報も一切ない。そこには人生においてムダなものしかないかもしれない。けれど、確かに多幸感が広がっている。笑い疲れて疲労困憊になりながらも、また見たいと再生ボタンを押してしまった。

『有吉の壁』
テレビ朝日系 金 21:00〜21:54
http://www.ntv.co.jp/ariyoshinokabe/