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連載近田春夫の考えるヒット

「ヤバイTシャツ屋さん」は金を払って観る価値がある――近田春夫の考えるヒット

2018/10/10

『KOKYAKU満足度1位(「とってもうれしいたけ」収録)』(ヤバイTシャツ屋さん)/『202X』(布袋寅泰)

絵=安斎 肇

 ヤバイTシャツ屋さん……。

 恥ずかしながら私はその存在もなにも一切知らずだった。資料によればロックバンド(ギタートリオ)とのことで、『げんきいっぱい』や『KOKYAKU満足度1位』など新曲も若者たちの注目を超集めているらしい。検索すると『KOKYAKU……』の動画はライブ仕立てであった。

 事前情報では歌詞が面白いとの話だったが、では一体何が歌われているのか? 流石(さすが)に今時のjpopだ。そう簡単には聴き取ることも出来ぬ。スーパーインポーズされていようとも、俺の(いつも再生に用いる)手持ちのiPhoneの画面ではフォントのサイズが小さ過ぎる、歌詞を追うのにもなかなか骨が折れる。

 イヤホンは鬱陶しいのでスピーカーでの小音再生という習慣も手伝い、必然的に確認できるのは、大体の演奏スタイル/パフォーマンスであり大まかな音像ということにもなってしまうのだが、捉えようによっては、それこそ表現全体を大変に俯瞰的に眺めている状態ともいえるだろう。

 そんな訳でザックリとしたところをいうと、まず一番ダイレクトに突き刺さってきたのが演奏であった。いわゆるメタル系の、基本がアップテンポの縦ノリという世界が繰り広げられるのだが、とにかく正確無比この上ない快感。

KOKYAKU満足度1位(「とってもうれしいたけ」収録)/ヤバイTシャツ屋さん(ユニバーサル)オリコン男性が選ぶ「紅白で観たい」1位。

 俺がこの手のプレイで最初にショックを受けたのは、来日したBiohazardのライブであったが、当時はこうした音は日本人の肉体では無理なのだろうなァなどと、ボンヤリそう思ったりもしたものである。それが今や易々と――しかもベースギターは可愛らしい女の子だ――やってのけてみせるという。その景色に、思わず見入ってしまったのだ。

 このページを担当するようになってもう随分経つが、その間俺はずーっと、jpopとは旋律や歌詞、歌唱の官能性を味わう娯楽なのだとばかり思って接してきた。いい換えれば、いくら上手でもバンドの演奏は伴奏の立場である。どこまでいっても、歌との主従の関係は崩せないものだと。

 ヤバイTシャツ屋さんの動画を観ていると、そのあたりが対等というか。勿論、そこはあくまで俺の主観的見解なので、上手く説明もつかないのだが、何を歌っていようと、歌詞が如何に聴き取れまいと何にも問題ない。演奏の姿を見ているだけで、何か気分の高揚を覚えてくるのである。

 或いは、彼らが特別というわけではなく、持ち楽曲のポップソングとしての説得力とは別にというかそれ以上に、演奏そのものがフィジカルな興奮を呼び起こす、そんなライブを魅力とするロックバンドが増えつつあるのか?

 奇をてらったようにも思えるバンド名や曲タイトルに惑わされがちではあるが、この演奏には金を払って観に行くだけの価値はあるね!

202X/布袋寅泰(ユニバーサル)“トゥーオートゥーエックス”と読むよう指定されている。『北斗の拳202X』テーマソング。

 布袋寅泰。

 おっと忘れちゃいけない。この男のギタープレイこそ、見ればついつい目の行ってしまう「芸」といえる。我が国では本当に稀有な演奏家だ。

今週の3連発告知「10/27、28と逗子の“池子の森の音楽祭”に、2日連続で出る予定だよ。1日目はDJのOMBと組んでいるダンストラック中心のユニット、“LUNASUN”として。2日目はバンド“活躍中”で出るからね~」と近田春夫氏。「あと、31日には38年ぶりのソロアルバム『超冗談だから』も発売するから、よかったら買ってね!」

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