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広島・菊池涼介の「胴上げ時カンチョー」について考える

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/13

 カープ三連覇の瞬間が刻一刻と近づいていた9月、私には一つの心配事があった。今年こそは、こんなニュースが優勝翌日のスポーツ紙を賑わせてしまうのではないかと。

「菊池涼介、カンチョーにより両手人差し指骨折。ポストシーズン絶望」

 その心配は杞憂に終わったが、今年もやはり胴上げや優勝セレモニーの最中に菊池はカンチョーに勤しんでいた。これで2016年以降、3回の胴上げ全てで菊池はカンチョーを行ったことになる。カンチョー皆勤賞だ。

 相手の背後に回って尻を指でプスリとやる子どもの悪戯「カンチョー」。最初に断っておくが、私はカンチョーを容認している訳ではない。一歩間違えばいじめにもつながる行為であり、下手をすれば双方ケガをしかねない。巨人時代の清原和博の弟分だった小田幸平は、清原から受けたカンチョーにより4度も病院に行くはめになったと以前テレビ番組で告白していた。菊池の行為は、ここがもし学校ならば「菊池君、後で生徒指導室に来なさい」というレベルの案件である。

菊池涼介と忍者との比較 ©オギリマサホ

なぜ胴上げ時にカンチョーを行うのか

 しかしその影響はじわじわと広がっている。昨年、一軍の胴上げでは天谷宗一郎が「去年菊池がやっているのを見ていいなと思った」とカンチョー加害者となり、二軍の日本一胴上げの時にも庄司隼人や岩本貴裕らによってカンチョーの応酬が繰り広げられた。「胴上げ時にカンチョーを行う風習」が、菊池のおかげですっかりカープ内に浸透してしまったのである。図らずも菊池本人が「カープの伝統のいたずらがカンチョーです。いや、僕と丸(佳浩)で伝統にしています(笑)」(『週刊ベースボール』2016年9月5日号)と述べた通りになった訳だ。

 そもそもなぜ菊池は胴上げ時にカンチョーを行おうと考えたのだろうか。「胴上げ時に人と違うことをして目立ちたい」というならば、他にも方法はある筈だ。80年代黄金期西武の工藤公康らが始めたとされる「胴上げ時に皆に背を向けてセンター方向のカメラに映るようにジャンプする行為」も、現在では多くの選手が行っている。コバトン(西武)やお父さん犬(ソフトバンク)など、ぬいぐるみを一緒に胴上げするのも目立つという点では有効だ。

 しかし見ている限り、菊池は目立とうと思ってカンチョーをしている訳ではなさそうだ。菊池のカンチョーはオールスター出場時にも見られ、そこでは筒香嘉智や戸柱恭孝(DeNA)といった他球団の選手がターゲットとなっている。どうも菊池は「ハレの場で気分が高揚すると思わずカンチョーを仕掛けたくなる」という性格のようなのだ。

 とは言いながら、菊池は相手を慎重に選んでいるように見える。昨年の胴上げ時には一岡竜司、磯村嘉孝がターゲットとなり、今年は今シーズン途中にソフトバンクから移籍した曽根海成が狙われた。菊池は人への接し方について、著書『異次元へ』において「『この子は面白い子だな。ちょっとイジってあげたほうが打ち解けやすいだろうな』とか、『この子はおとなしそうだから、自然と輪に入ってこられるようにしたほうがいいかな』」と、人により対応を変えていると語っている。新しく加わった曽根がリラックスしてチームに馴染めるようにとの配慮だったのかも知れない。しかし、これから胴上げに参加しようという時にカンチョー被害に遭い、転がって悶絶する曽根の姿は何とも気の毒であった。