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なんでわざわざ1500ページも。私が“謎学者”の大評伝を書いた理由

小室直樹とは何者だったのか?

2018/10/14

genre : エンタメ, 読書

note

 小室直樹という学者を知っているだろうか。

 1980年に『ソビエト帝国の崩壊』を刊行しソ連崩壊を予言した「天才」学者、角栄裁判では「検察官をぶっ殺せ!」とテレビの生放送で絶叫した「奇人」学者といえば思い出す方も多いのではないか。

小室直樹 ©文藝春秋

奇人学者は練馬区の「スナックどん」で何をしていたのか

 この小室直樹、実は、私の命の恩人なのである。学問の道において挫折し死を決意したとき、ふと手にした小室の本が私の命を救ってくれた。

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 それからは、小室の書いたものは全て読んだ。ただ、生前の小室に会う機会はついに訪れなかった。だから余計に小室のことを知りたかったし、評伝執筆の依頼があったときは取材名目で小室のことを聞けると嬉しかった。

 弁護士、原発事故の紛争解決に携わる非常勤公務員の仕事をしながら、その合間に取材を始めた。最終的に取材した方は100名を超えた。評伝とは資料に依拠して書くだけではないことも身をもって知った。

上下巻、圧巻の1500ページ!

 会津取材旅行の際、路傍で一人の老人に会った。「小室直樹さんをご存知ですか」と聞いたら「小さいとき一緒に遊びました」。彼から小室の同級生を紹介してもらい、国民学校時代を描くことができた。