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政治家一族の「プリンス」中曽根康隆は沈黙する小泉進次郎をどう見たか

小泉進次郎は変節したのか? 連続インタビュー #2

2018/10/11
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初当選後はお詫び行脚をしっかりしました

中曽根 昨年、急に衆院の解散があって、事務所開きの日、前の晩は一睡もできぬまま、吐きそうな気分で、早朝から街頭に立った。新聞では「無所属でも出る」という決意が報道されていましたから、通り過ぎていく自動車の中からも「がんばれ、がんばれ」の応援がすごいんですよ。頭の中がぐちゃぐちゃのまま、事務所の1階で、たくさんのテレビカメラと支援者のみなさんを前に「どういう立場でもみなさんの期待に応えられるように頑張ります」と挨拶するわけです。その10分後、2階に上がってミーティングルームに移って座った。その瞬間、「比例に移る」と決断し、その場ですぐにスタッフたちに表明しました。

 怒る人も泣く人もいました。その結果、バッジはつけられた。でも、そこからの説明が何よりも大事で、初当選後はお詫び行脚をしっかりしました。「そういうことだったのか、じゃあ次も応援しよう」と言ってもらえるかどうかは不安でしたが、今のところは仲間たちが残ってくれています。今は1期生だから何を言ってもわかってくれないこともありますから、とにかく挑戦し続けていきたいという思いが強くあります。

 小泉進次郎さんだって、世の中からは当たり前のように議員になったと思われていますが、初めの選挙は大逆風の下、比例重複立候補を断り、公明党の推薦も断り、裸一貫になって、世襲批判の中に突っ込んでいって結果を出したわけですよ。私の場合も追い風はなく、神輿に担いでもらったのではなく、むしろ神輿に無理やり乗ったようなものですけど、仲間たちはどのようにして私が議員になれたかをわかってくれています。たぶん、進次郎さんもそういう仲間たちに支えられているんじゃないんでしょうか。

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©文藝春秋

今はお互いに一国一城の主だと思っています

――小泉さんの父・純一郎さんは、中曽根元首相に引退を迫った過去があります。中曽根さんは政治家になる前、あの時の「悔しさ」についてブログでつぶさに綴ったことがありました。現在、その息子である小泉さんにはどのような気持ちがあるのでしょうか。

中曽根 たしかにふたりが並べば、「因縁のライバル」とか、面白おかしくネタにされそうですけど、あれはうちの爺さんと小泉純一郎さんが解決してくれればいい話で、世代を超えて引き摺るのは何のプラスにもならない。そういう点で進次郎さんをライバルとも思ったことはないし、純粋に同世代として、これからの日本をどうしていこうか考えていこうという話です。

 今はお互いに一国一城の主だと思っていますから、私から意図して小泉さんに近づこうとは思わないし、一致できるところはどんどん協力していけばいい。かといって、無理して同じ思想になる必要もありません。特に意識もしていませんが、私が初当選してからの1年間は進次郎さんと距離が縮まる機会がありませんでした。まあ、自然な流れで何かのタイミングで、同じ仕事をするようになることもあるんじゃないんですか、ね。

(#3 特別編・安里繁信 につづく)

文藝春秋 2018年 11 月号 [雑誌]

(著)

文藝春秋
2018年10月10日 発売

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