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「しがみついていきたい」と語った永遠の野球少年・石川雅規投手に伝えたかった言葉

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/19

 今回は畠山選手の記事のときに書いていた、もうひとりの気になる選手について書きたいと思います。永遠の野球少年・石川雅規投手です。あ、身長で「少年」って言っているんじゃないですよ? 熱い投球、野球に対する情熱。石川投手を見ていると年上ですけど、なんだか野球少年みたいで、その一生懸命さに心奪われてしまうし目で追ってしまうんです。

私が石川投手のことを大好きな理由

 石川投手に興味を持ったきっかけは、「山本昌投手と石川投手自身の年度別の成績をロッカーに貼っている」という記事を目にしたことでした。目標とする選手の成績をいつも見るところに貼って自分を鼓舞する。私も声優になりたくて、いつも目標とする人の言葉を見えるところに置いていて、「こんなすごい選手でもこういうことやっていたりするんだなぁ」と親近感を覚えました。球速がないからと諦めず、むしろ立ち向かい、自分ができることを把握して、その中で最大限の武器を自らの努力で掴み取って、大好きなことをやり続けている。

「球速が売っているなら買いたい」とお話ししていた記事も読みましたが、私も声優をやる中で、変わった声を持った人が羨ましくて「『変わった声』が売っているなら買いたい」と思ったこともあり、ますます親近感を持ったと同時に、「私も私の声でできることをもっと磨き、もっともっと武器を増やせるように頑張らなくちゃ」と、気持ちが引き締まりました。2016年に、以前お話ししたホームランラジオで初めて石川投手に取材できたのですが、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくださって、まっすぐに自分の言葉で熱い気持ちをお話ししてくださったんです。そのときのことを少し書きますね。

永遠の野球少年・石川雅規投手 ©文藝春秋

 2015年リーグ優勝し、CS、日本シリーズに進んだスワローズ。私はCS、日本シリーズどちらも観戦していました。石川投手はCSで1試合、日本シリーズで2試合登板したのですが、力を発揮できることなく降板せざるを得なくて、勝利投手にはなれなかったんです。石川投手が悔しそうにマウンドを降りてベンチに下がっていく後ろ姿が今も忘れられないんですが、このとき見ていてとても悔しかった気持ちと、次回の日本シリーズで石川投手がのびのびと自分の投球をしている姿、そして石川投手の最高の笑顔が見たいという気持ちをこのキャンプ取材で話してみたんです。

 今振り返ると、初めて聞いたであろう番組の取材で、かつ初めて会った相手で、スポーツを担当するアナウンサーさんでもなく、普段接点のない声優に、キャンプで気分新たに取り組んでいるのに悔しかった話を思い出させる質問を投げかけられて、気分を害してしまってもおかしくない内容だったと思うんです。それなのに石川投手はそのような表情は一切せず、そのときのことを思い出しながら真摯に、「日本シリーズでは悔しく、特に先発投手として全員が5回もたず降板という形で、圧倒的な力の差で負けたという思いがあるので、やっぱり悔しいですね。また新たな目標もできましたし、もう一度日本シリーズの舞台に立ちたいので、それをモチベーションにしてキャンプから取り組んでいます」と、自分の気持ちと向き合いながらまっすぐにお話ししてくださったんです。

「好きなことは絶対にあきらめない」意思の強さ

 それから数年経ち、「事件」は起きます。文春野球の東京ヤクルトスワローズ監督・長谷川晶一さんのツイッターにこんな文章が書かれていたのです。

「思うように勝てず、マウンドから逃げ出したい思いになったこと。どこかケガしないかな……と、弱気になったこともある」

 長谷川監督が書いた書籍『96敗−−東京ヤクルトスワローズ〜それでも見える、希望の光〜』に石川投手のインタビューがあって、その中でのことを少しだけツイッターで紹介してくださっていたのです。衝撃でした……。胸が苦しくて張り裂けそうでした。確かに2017年の成績は4勝14敗と苦しい結果だったと思います。でも、「ケガでもしないかな」なんて……。もちろん本気で思ったのではないと思いますが、ケガに苦しみマウンドを去らなくてはいけなくなってしまった選手もたくさん見てきただろうし、仲のいい館山投手の苦しさを一番近くで見てきた石川投手が……。

 2016年に取材させていただいたときに、「大きい人に負けたくない。この気持ちがあるから頑張れる」と力強く答えてくださいました。そして、「お子さんにも野球選手になってほしいですか?」と聞いたときに、「好きなことならなんでもいいです。好きなことを途中で諦めることなくやってほしい」と笑顔で答えてくださった石川投手が……。好きなことを途中で諦めることなく頑張ってきたからこそ言える息子さんへのメッセージ。こんな石川投手がそんなにも苦しんでいた……。この事実にファンとして何とか力になりたいと思ったんです。

 とは言っても、このインタビューでこの言葉が出てきたということは、もう石川投手の中で乗り越えたということなんだろうし、家族の支えやチームメイトの皆様の支えもあるだろうし、私にできることなんてないっていうのはわかっていました。でも、それでも、伝えたいって思ったんです。いちファンの思いを。ちょうど今年のキャンプ取材が決まっていたので、そこで伝えてみました。

「ファンとしては勝って欲しいですけど、負けることよりもケガをしたりして志半ばで辞めてしまう姿をみるのが一番辛いなぁと思うので、いつまでも応援させて欲しいんです」

 ずっと伝えたかったことだからスラスラと言葉が出てくるはずで、迷惑かけないように何度も心の中で気持ちをまとめて、メモして、練習していたはずなのに。声が震えて、言葉が思うように出てこなくて、少し簡潔になってしまいました。