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【新書の窓】見えない欠陥

『捨てられる銀行』『巨大アートビジネスの裏側』『新築マンションは9割が欠陥』『台湾とは何か』『東京どこに住む?』

source : 文藝春秋 2016年8月号

genre : エンタメ, 読書

疲弊する地方経済の牽引役となるべき地方銀行。しかし、実態は地元企業の窮状を放置している――。橋本卓典『捨てられる銀行』(講談社現代新書)は、地銀が変わらなければ地方創生は不可能という森信親・金融庁長官の地域金融の大改革の中身を伝える。漁業から観光業への産業転換を支援する稚内信金、ノルマを撤廃し「顧客のためにどう行動したか」で行員を評価する北國銀行の成功例は、我々がどんな銀行を信頼すべきかを教えてくれる。

 一方、不透明な世界経済を尻目に活況を呈するのがアート業界。石坂泰章『巨大アートビジネスの裏側』(文春新書)の著者は、オークション大手サザビーズジャパン前代表。アートの価格高騰の理由、彼らが埋もれた名画をどう見つけるかなど、興味深い内幕が明かされる。サザビーズには超富裕層のリストがあり、出品作をプライベートジェットで自宅まで運ぶこともあるという。億万長者たちの華やかなエピソードも楽しい。

 船津欣弘『新築マンションは9割が欠陥』(幻冬舎新書)では、施工状況を千件以上調査した著者が、マンションの欠陥は今後もなくならないと断言。その原因に、建設時の複雑な下請け多重構造を挙げる。末端労働者の多くは低賃金、重労働。専門外の欠陥を見つけても互いにフォローし合う環境にないという。それでも買うなら「築十一~十三年程度の大規模修繕済みの中古マンション」。巻末の中古マンション購入におけるチェックリストは購入前に一読したい。

 今年、初の女性総統が誕生した台湾。野嶋剛『台湾とは何か』(ちくま新書)は、その蔡英文新総統を軸に転換期の台湾を描く。著者は台北支局長などを歴任した元朝日新聞記者。南シナ海を扱う第四章は興味深い。「最大の軍事力や警察力を現地に置いてきたのは台湾」だが「国家として国際承認されていないから」「様々な国際的枠組みから排除され」ていると指摘し「南シナ海の対話メカニズムへの台湾の参画」を説く。

 速水健朗『東京どこに住む?』(朝日新書)は、かつて「西高東低」と呼ばれた東京の人気の住宅地が、ここ五年十年で都心圏内の東部、オフィス街だった八丁堀や隅田川沿いの蔵前などに変化しつつあると指摘する。これらの街の共通点は、肩がぶつかるほどの狭い飲食店が多いこと。地元コミュニティの一体感があり、都市の匿名性と地元感覚が両立できる「働けて暮らせるハイブリッドな街」なのだという。現代の都市生活者の目線を知る一冊。(川)

捨てられる銀行 (講談社現代新書)

橋本 卓典(著)

講談社
2016年5月18日 発売

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新築マンションは9割が欠陥 (幻冬舎新書)

船津 欣弘(著)

幻冬舎
2016年5月28日 発売

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台湾とは何か (ちくま新書)

野嶋 剛(著)

筑摩書房
2016年5月9日 発売

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東京どこに住む? 住所格差と人生格差 (朝日新書)

速水健朗(著)

朝日新聞出版
2016年5月13日 発売

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