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惨めなワカゾーはもういない 日本ハム・石川直也がCSで見せたビッグチャレンジ

文春野球コラム ペナントレース2018

 最後は田中賢介のセカンドフライだ。万事休す。ソフトバンク・川島慶三が拝み捕りして試合終了。2018年パ・リーグCS第1ステージ勝者は福岡ソフトバンクホークスに決した。「うわー」「あー」、フライが打ち上った瞬間、僕らはかなり情けない声を上げた。そして「終わったー」とつぶやいたのだ。終わってしまった。ファイターズの2018年が終わってしまった。

祭りの後のような鎌スタで見たCS第3戦

 僕は雨のそぼ降る鎌ケ谷スタジアムにいた。球団主催のパブリックビューイングだ。1、2戦は土日のデーゲームとあってけっこう入ったようだが、第3戦は雨の月曜ナイターだった。閑散としている。行ってみてびっくりしたよ。真っ暗なスタンドに工事現場で使うバルーンライト(投光器)が4機置かれていて、照明はそれだけ。考えたら鎌スタは周囲の梨農園に配慮してナイター設備を持たない(夜間、照らされると梨の生育がおかしくなる)球場なのだった。パブリックビューイングは入場無料だったけど、観客は100人いなかった気がする。皆、傘を差して「大田泰示のベルト修理」や「トンキン5球で2ホーマー被弾」をしんみり見つめていた。時折、2軍マスコットのカビーちゃんが(真っ暗だから)足元に全神経を集中し、恐る恐る通路を往復している。

 この感じは何だろうなとずっと考えていた。寂寥感は甚だしい。ひと気のない暗いスタンドは祭りの後のようだ。イベントの片づけに業者が入ってるのに、何人か客がまだ頑張ってるみたいなまばら感。けど、非日常の魅力はある。僕は開場以来、ずっとここに通ってるけど、こんな夜遅くのスタンドには初めて入った。センターのビジョンにヤフオクドームの熱戦が映し出され、その光で鎌スタの外野の芝がぼんやり照らされている。映画『フィールド・オブ・ドリームス』を連想した。あのぼんやり青い芝の向こうから上田佳範やオレラーノが姿を現すんじゃないか。

 が、実際には雨に耐え寒さに耐え、ソフトバンクのホームラン攻勢に耐えているだけで第3戦が終わってしまった。フィールドに奇跡は起こらなかった。ファイターズは負けたんだ。パブリックビューイングは「DJチャス」こと中原信広・首都圏事業部ディレクターの一本締めでお開きとなった。あ、この感じは「年末」だったんだなと思う。僕らは鎌スタのスタンドでビジョンに見入りながら、ゴーンゴーンという除夜の鐘を聴いてたのかもしれない。ゆく年くる年。去り行く人、去り行くシーズン。

10月15日、雨のそぼ降る鎌ケ谷スタジアム ©えのきどいちろう

 応援仲間らと鎌ヶ谷駅、船橋駅で「おつかれ様でした」と別れて、1人になったときは、何となく一瞬、破魔矢をいただいて終夜営業の電車で帰るような錯覚に陥ったのだ。ただ感情が違っていた。悔しい悔しい。はらわたが煮えくり返るほど悔しい。1人になるとごまかせない。京成線の車中、しみじみ悔しくて、どうしようもなくて、目をつぶって顔を伏せていた。

 そして同じように顔を伏せていた男のことを思い出した。