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ハムファンが見たCS 多和田真三郎の連続四球

文春野球コラム ペナントレース2018

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辻監督はギリギリの局面でガマンした

 プロ野球だから技術なのだ。といってプロ野球のピッチャーにも百発百中のコントロールを持った「神様」はいない。必ず一定の割合、投げ損じる。で、四球は多くの場合、技術より心理だ。その心理のアヤの部分が面白い。強気の投球が(1本の安打など)ひとつのきっかけで一転、弱気の投球になったり。まともに行くとやばいと変化球のコースを狙いすぎて、どんどん窮屈になったり。

 たぶんトータルで考えたら、バッターは自信を持って投じられた強気のストレートがいちばん打ちにくいと思うのだ。だけど「強力打線」を前にして、しかも「抑えなきゃ」「打たれちゃいけない」を意識すると、なかなか「自信を持って」「強気」にはいけないだろう。

 このイニング、当の多和田はもちろん、捕手の森友哉、辻監督、土肥ピッチングコーチ、もうみんな頭のなかグルグルだったと思う。どうしたらいい? 間を取らせるか? 救援の準備は? 多和田はエースに育てたい大器だ。ここはガマンしたい。が、ガマンしていると短期決戦の流れは相手に行ってしまう。どこまでガマンするか? 何を目安にする? どこで決断する?

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 ドカーンと飛んでくホームランは確かに野球の華だけど、面白いのは頭のなかグルグルしてるベンチワーク、投球のリード、心理だ。あのイニングはスタンドにもさざ波のように不安が広がって、ざわざわしていた。

 で、辻さんガマンされたんだよね。あれは大きな決断だ。動いてないから決断がないってわけじゃない。勇気の決断。第1戦、菊池雄星で取られて、続く第2戦、序盤で7対5はギリギリでしょう。で、そこから多和田が期待に応え立ち直るんだ。6回投げて6被安打5失点、つまりその後は0点に抑えた。ちなみに四球は3、あの連続四球だけだった。

 僕にはCSファイナルの行方がどう転がるかわからない。どっちの打線が打ち勝つのか見当もつかない。ただ長年のファイターズファンの立場からすると、来年の多和田真三郎は厄介だと思う。タイトルを獲っただけでなく、ポストシーズンの経験でひとつ大きくなった。「山賊打線」の豪打西武の凄みは「ピッチャーを成長させられる打線」であることだ。辻監督の凄みは(ギリギリの局面で)平然とガマンできることだ。

CSファイナルの行方がどう転がるかわからないが、来年の多和田真三郎は厄介だ ©えのきどいちろう

 附記 ご承知の通り、本稿がアップされる21日午前11時の時点で、西武は2勝3敗と王手をかけられた状態だ。4試合で38失点の「投壊現象」にはハッキリ四球が関与している。この流れは変えられないのか。変えられるのか。プレーボールを待ちわびている。秋晴れの日曜日、好ゲームになるといいなぁ。

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