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今年のオリックス“最大の収穫” 吉田正尚の忘れられない場面

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/21
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 皆さん、学生の頃皆勤賞をもらったことはありますか? 私の場合、最初は皆勤賞を狙うんですが、結局一度ももらえたことがありません。皆勤賞って簡単そうに見えて、意外ともらえないものなんですよね。当時はなんとも思っていませんでしたが、今から振り返ると皆勤賞ってかなり凄いんです。だって1日も学校を休まないんですよ。休みたくなる時ってありませんでしたか(私は1週間に1回くらい休みたいなって思っていましたが……)。

 賞とはまた違いますが、野球においても全試合出場している選手って、かなり凄いと思いませんか。今シーズンのパ・リーグで全試合出場した選手は11人だけです。今回はそんな中、オリックス・バファローズで唯一全試合出場を果たした吉田正尚選手を取り上げたいと思います。

バファローズで唯一全試合出場を果たした吉田正尚 ©時事通信社

忘れられない衝撃ホームラン

 吉田正尚選手の魅力と言えば、フォロースルーが大きいダイナミックなフルスイングです。日本球界でここまで振りきる選手といえば、吉田選手と柳田選手(福岡ソフトバンクホークス)、森選手(埼玉西武ライオンズ)くらいではないでしょうか。吉田選手は身長173cmでプロ野球選手としては大柄な選手ではありませんが、あの打撃フォームから、とてつもない弾道と飛距離を生み出します。吉田選手のホームランの中で今でも忘れられない衝撃のシーンがあります。それは8月中旬に行われた埼玉西武ライオンズとの試合で、バットを折りながらホームランを打ったシーンです(普通バットが折れたら、打球は失速してしまうはずなんですが!!)。

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 私が好きなアニメ「MAJOR」でも主人公・茂野吾郎(投手)のライバル・ギブソンJr.が、主人公の渾身の球をバットを折りながらホームランを打ちました。その時は「漫画だなー」と思っていたのですがまさか実際に起こりうるとは! 本当にびっくりしました。

 見ていて惚れ惚れするような気持ちの良い打撃フォームですが心配なこともあります。それは腰の怪我です。吉田選手は2016年と2017年と腰の怪我で離脱しており、約60試合程しか試合に出ることができていませんでした。1年目からポテンシャルの高さを示し、万全なら毎年ホームラン30本以上打てるレベルの選手だと思いますが、スイングを見ていると腰は大丈夫なんだろうかと初めて見た時から心配でした。私も中学生の頃ダンス中のアクロバットをよくしていたため、腰の怪我をしたことがありますが、腰の怪我はとても辛く、当時日常生活をするだけでも大変だった記憶があります。

 吉田選手は昨年のシーズン終わりに腰の手術を受け、今シーズンの目標として規定打席到達を公言していたので、目標以上の全試合出場を成し遂げたということはとても凄いことだと思います。ただあのフルスイングを見るとまた腰痛が再発してしまうんじゃないかと心配になってしまう気持ちも少しありますが、今シーズンは負担が軽減するように打撃フォームを少し変更したように見えるので、これからもあのフルスイングを活かしつつ怪我しないフォームを追求していって欲しいと思います。

 野手としてチームの軸である吉田選手が離脱してしまうと、オリックス・バファローズの優勝の可能性はありえないと言っても過言ではありません。オリックスは今シーズンは4位に終わりましたが、吉田選手が全試合出場して怪我なくシーズンを過ごすことができたというのは、来季以降かなりの収穫ではないでしょうか。

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