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赤坂太郎
2016/04/08

解散にGOを出したスティグリッツ

ダブル選は「任期中改憲」日程を計算の上。2つの衆院補選が全てを握る

source : 文藝春秋 2016年5月号

genre : ニュース, 政治

カット・所ゆきよし

 3月27日、東京・港区の品川プリンスホテルでは民進党の結党大会が開かれた。

「今日は歴史的な日だ。日本の将来が我々にかかっている。自由、共生、未来への責任。この3つの言葉を結党の理念として覚悟を持って新進党、いや民進党をスタートさせよう」

 新党の代表となった岡田克也のあいさつの冒頭である。感情を表に出さない岡田にしては珍しく言葉に力がこもっていたが、緊張のせいか肝心の新党名を「新進党」と間違えた。1994年に結党した新進党には岡田も加わっていたが、その後は内紛を繰り返し、たった3年で解党している。新党の船出には、縁起悪い間違いだった。

 この20年あまりの間、多くの政党が誕生し、そして消えてきた。その中でも、民主党と維新の党の合流による民進党の旗揚げは、最も熱気の乏しい部類に入るだろう。新党とはいえ、民主党から袂を分かった議員がよりを戻しただけという印象が強い。加えて合流の仕方や党名でもめ、二転三転したことで国民の期待も冷めていることは明らかだった。産経新聞とFNNが3月19、20の両日に行った世論調査では、民進党に期待すると答えた人はわずか27.6%だった。

「大変な事が起きました」

 大まかな流れは2月初旬には決まっていた。民主党代表・岡田は2月3日夜、参院副議長・輿石東、元衆院議長・横路孝弘、前衆院副議長・赤松広隆らと非公式に会合を持った。岡田以外の出席者は党内リベラル派の重鎮。総じて新党結成には消極的だ。

 この会合で岡田は、民主党を解党して新党をつくることはないと断言。代わりに新しい党名にこだわる維新の党の江田憲司らに配慮し「民主」という名を残しながら党名をマイナーチェンジすることはあるという考えを伝えた。これは重鎮たちがぎりぎり許容できる落とし所だった。この日の会合では、そうなった場合の有力候補として「立憲民主党」が上がった。

 新党問題は、おおむね、この段取り通り進んだ。合流方法は維新の党が民主党に加わる形となり、党名は「民主党」以外となると決まった。

 民主党は「立憲民主党」、維新の党は「民進党」を推薦し、それぞれが行う世論調査を踏まえて決めることになった。党名が最終決定する3月14日朝の段階では、誰もが立憲民主党になると信じていた。やせ細ったとはいえ民主党は野党第一党で、支持も組織力でも維新の党を上回る。民主党側は、新党名が正式決定する前に党名が「5文字」になるデザインの新しいポスターを発注したほどだ。

 ところが、である。

「大変な事が起きました」。こんな書き出しの文を14日午後、フェイスブックに書き込んだのは維新の党の柿沢未途である。

「両党の世論調査の結果、民主党の調査でも、維新の党の調査でも、『民進党』が『立憲民主党』を上回り、新党の党名は『民進党』とする、というのが、新党協議会の結論となりました」

 柿沢は江田とともに、維新の党側から党名検討チームに参加。民進党を推す側にいた。その柿沢が「大変な事」というのだから、どれだけ想定外の結果だったのかが分かる。

 民主党の選挙に直接かかわる中核的な支援者や運動員、支持組織の連合などが「民主」に強い愛着を持っていたのは間違いない。しかし2009年、民主党政権を誕生させる原動力となった無党派層は逆に「民主」の2文字に強烈な違和感を持っている。世論調査はそれを鮮明に表していた。コアな支持層にしか目を向けられない内向きな組織政党になってしまった民主党。無党派層の思いを読み間違えていたのだ。

 民主党側が「民主」にこだわった最大の理由は、選挙戦術上の問題だった。党名に「民主」が残れば、誤って「民主」と書いた投票が有効になる可能性があるからだ。安倍政権に対峙する塊をつくろうというときに、まず書き間違い対策を心配するというのは滑稽な話ではある。

「5文字」の党名を前提の新ポスターの試し刷りが党本部に届いたのは皮肉にも「3文字」と決まった日、14日のことだった。

 一方、首相・安倍晋三には余裕があった。17日、東京・内幸町の帝国ホテルで開かれた日本商工会議所会員総会。安倍があいさつの締めくくりでこう述べた。

「今年は私どもにとっても大切な年となる。中身についてはあえて申し上げないが、大体、想像がつくのではないかと思います」

 出席者からどよめきが起きた。安倍の言葉から「衆参同日選」を読み取ったのだ。

 あらかじめ準備された原稿には「中身については」以降はなかった。官邸ホームページに掲載されたあいさつ全文からも削除されている。完全なアドリブだったのだ。自身の発言が憶測を呼び、政治の流れをつくっていくのを楽しんでいるかのようだった。

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