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東京で加速する山形そばブーム “そば激戦区”秋葉原で注目の「陸人」

2018/10/16

genre : ライフ, グルメ

note

やや太めの田舎そばが白胡麻・海苔とピッタリ

「ざるそば(ピリ辛)並」は緑色系の織部焼の器に、やや太めの田舎そば、一面の白胡麻、ねぎと適度な量の刻み海苔がかけられている。そして玉子が一つ。つゆは深い織部焼の器にラー油の浮いたもりつゆである。

 玉子は、途中で麺の方に落として、混ぜて食べるようにと促される。この玉子の使い方は「池波正太郎スタイル」である。

織部焼の器、そば、ねぎ、海苔の色が美しい「ざるそば(ピリ辛)並」
「途中で玉子を落として食べるとおいしいです」と女性店員さんからアドバイス。混ぜてから、つけ汁につけて食べると絶品だ

 麺線は野方の「もがら」、虎ノ門の「港屋」、麹町の「そばうさ」より細く、麺の硬さもごわっとしないややマイルドな食感である。麺は国内産の挽ぐるみそば粉を使って特注で製麺したやや黒っぽいタイプのそばで、白胡麻と海苔との相性が良い。ピリ辛つゆも辛すぎるということはなく、つゆも甘いことはなく通常のもりつゆに近い上品な味である。

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豚ロースが載った「肉そば」の素朴さ

 友人の注文した「肉そば並」には、豚ロース系のバラ肉を湯引きしたものが載って、辛くない普通のもりつゆで食べる。ぶっかけではなく鶏肉でもないのだが、山形そばを彷彿とさせる素朴さが感じられる。ラー油がない分、シンプルさを味わい楽しむことができてなかなかよい。

湯引きした豚バラ肉と綺麗な海苔が載った「肉そば並」

 テーブルには、あおさを混ぜて揚げた揚げ玉がフリーで置いてある。これを麺の方にはらりとかけて食べるとカリッとした食感がよい。

山形そばの虜になった元商社マン

 食べ終わる頃、そば湯を猪口に入れて持ってきてくれる。テーブルにあるつゆを入れて飲んでもよし、食べたつゆに入れて飲んでもよい。

 イケメンの店主、古家伸一さんは40歳。大手商社で食材の買い付けをしていたそうで、その頃から田舎そばが大好きだったそうだ。そして、お客さんに食を提供する仕事がしたかったという。仕事先で山形の食に触れる機会が多く、山形そばの虜になり、「陸人」の開業を決心したという。

「蕎麦処 陸人」の店主、古家伸一さん(40歳)

 店名はお客さんからの「リクエスト」、「コミュニケーション」、「クリエイト」を大切にという造語で「陸人」と命名したそうだ。なんとなく納得してしまった。

 夜はお酒とつまみとそばを座って楽しむスタイルの店になるそうだ。近々、「カレーつけそば」も登場予定とか。この麺で食べるとそれはうまいに違いない。秋の夜長のちょい飲み・ちょいそばにはうってつけの店である。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

蕎麦処 陸人
東京都千代田区神田佐久間町3-14-2

営業時間 
月~土11:30~14:00 17:00~23:00
日・祝 11:30~14:00

 

東京で加速する山形そばブーム “そば激戦区”秋葉原で注目の「陸人」

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