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靴カメラ、メガネ型、Wi-Fi搭載……盗撮のテクノロジー進化に気をつけろ

被害防止のため「盗撮罪」を厳罰化すべき理由

2018/10/16
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 彼らは盗撮犯の手口を熟知しており、駅などで盗撮行為をしている男性を物色。獲物を見つけると、LINEで情報を共有し、発見場所、服装、人相などを報告。「接触役」「彼氏役」「兄役」「見張り役」などを役割分担し、尾行していた接触役が彼氏役とともに声を掛ける。

「オレの彼女を盗撮しとっただろう。舞浜駅から見とったんだよ。撮った映像を見せろ。それとも警察へ行くか?」

「このことは決して口外しません」と署名

 心当たりのある男性はイヤとは言えず、彼らの言いなりになる。そこでインターネットを開いて、盗撮の示談金相場が50~100万円であることを示し、「それなら間を取って75万円でどうだ。オレと彼女の分で、合計150万円で手を打とう」などと言って、盗撮を認める謝罪と150万円を支払うという誓約を動画で撮影。相手の身分証、社員証、自宅の電話番号、家族構成、携帯番号、実家の住所などを聞くことも忘れない。

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©iStock.com

 さらに翌日から、「兄役」の男が「お前、金はどうやって工面するんだ。親から借りる算段はついたのか?」などと執拗に毎日電話をかける。相手が疲れ果てたところで、「じゃあ、こっちもちょっと泣いてやる。100万円でいい。死ぬ気で用意しろ」などと言って、その金を奪うのだ。

 金と引き換えに、相手の身分証をコピーした紙の裏に「このことは決して口外しません」と署名させる。この被害者は最後まで自分が騙されていたことに気付いていなかった。

 恐ろしいのは摘発された男の一人(29)がこんな供述をしていることだ。

「自分は1年前まで別のグループにいて、一番下っ端だったので、分け前も少なかった。いったんやめて会社員になったが、そこで知り合った人が新たなグループのリーダーになったので、再び加わることにした」

 すでに複数のグループが暗躍しているのだ。

カバンに偽装した小型カメラ。盗撮機は何にでも簡単に取り付けることができる(写真撮影:筆者)

盗撮犯のレベルも格段にアップする

 さらにスパイカメラの製造業者が、こんな内幕を打ち明ける。

「これからオリンピックに向け、ますます防犯の需要が高まり、さらに優れた小型カメラが開発されるでしょう。殺人事件で包丁が使われたからと言って、包丁の製造を中止するということができないように、小型カメラが悪用されたからと言って、製造を中止するということはできない。すべての商品には悪用すれば、法に抵触する旨の注意書きが添えられていますが、それでも悪用する人間が多いということは、違法行為に対する罰則が軽すぎるからでしょう」

 つまり、今後の2年あまりで盗撮犯のレベルも格段にアップするということだ。上川陽子前法相から引き継いだ山下貴司法相は、この問題の喫緊性を理解しているだろうか。

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