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終身雇用が崩壊しているのに35年ローンで自宅を買う怖さ

35年という時間の長さについて

2018/10/18

サラリーマンは物件投資においては常にカモである

 それもこれも、日本経済が右肩上がりで、一度勤めた会社はなるだけ長く勤めるものであり、退職金が一定額まとまって入ってくるライフプランの中で、かならず年2回はボーナスが出るんだという働き口がある前提で、とても低金利の住宅ローンが利用できて初めてその人たちは資産性のある住宅を吟味して買うことができる。正社員になれなければ人にあらずというわけではないけれど、転勤は当たり前、将来が不透明なフリーランスが社会で担う役割が増大し、一方で地方都市では高齢化が進んで空き家も増え、子供が独立した家庭では大きい家を持て余す老夫婦が「減築」したりするご時世で、経済システムだけは「安定した働き口を持て」「さすれば有利な住宅ローンを制度として利用させてやろう」という昭和の名残のようなものが残ってしまっているのであります。

©iStock.com

 ある程度、金融資産が増えてくると買った物件をまた担保に入れてさらに投資性の高い物件を買って手を広げる大車輪もありえるわけですけど、今回、スルガ銀行の事例ではっきりしたことは「サラリーマンは物件投資においては常にカモであり、実際には中途半端な掛け金しかぶち込めない人たちには微妙な物件や案件しか回ってこない」という悲しい現実だったりもするのでしょう。騙されないためには、頑張って調べて知恵を付けて行くしか方法はありません。以前、楽待新聞がスルガ銀行問題を仕掛ける前に書いている記事などが味わい深いのですが、不労所得となる不動産賃貸収入を見込んだサラリーマンが、せめてもの生活の安定と潤いを求めた結果、悲しいほど簡単に金融機関に絡めとられていったというのは特筆されるべきことです。

「スルガ」で破綻するサラリーマンは増えている 昨年チェックした競売物件の3割がスルガの融資案件という事実|楽待新聞
https://www.rakumachi.jp/news/column/217595

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 そう考えると、冒頭のイケダハヤト師の地銀への借り入れ申し込みにまつわる顛末は、実のところ現在の日本経済が内部に抱える物凄い矛盾や、右肩上がりから人口減少による撤退戦のフェーズで起きている現象をもろに体現しているように感じます。「イケダハヤト師でも銀行から住宅ローンを借りられる経済」が良いかどうかは、受け止める側の価値観や印象によるとは思いますが、私は精一杯生きているイケダハヤト師が好きですよ。

 また、そういうスコープから「変遷している日本経済」のなかに金融機関が繰り出す35年という途方もない長さを、みんな感じ取ってほしいと思います。

終身雇用が崩壊しているのに35年ローンで自宅を買う怖さ

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