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「人間は『意味の壁』をつくってしまって、見たいようにしか見ない」美術家・杉本博司インタビュー

アートな土曜日

2018/10/20

 お出かけに最良なこの季節、少し足を伸ばしてみるなら熱海がいい。

 駅から海とは反対側へ。山の中腹にあるMOA美術館がお目当てである。

 現在催されている展示は、「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻」と、「杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」の2本立てだ。

重文 洋人奏楽図屏風 桃山時代 16世紀 MOA 美術館蔵

熱海で桃山時代の名品に囲まれる

「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻」というタイトルの、「信長」は織田信長だし、彼が生きた時代が「桃山」であるのはわかる。

 では「クアトロ・ラガッツィ」とは? 信長のいた時代、1582年にローマ教皇のもとへ派遣された4人の少年使節のこと。彼らのたどった生涯とその時代を活写した西洋美術史家・若桑みどりの同名著書にちなんだ名付けだ。

 彼ら天正少年使節にまつわる史料や当時のキリシタン美術・工芸、それに《織田信長自筆感状》をはじめ信長ゆかりの文物で展示が構成されている。

重文 織田信長自筆感状 天正5年(1577)永青文庫蔵

「杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」のほうは、天正少年使節をテーマに美術家・杉本博司がつくり上げた作品を展観できる。

 杉本博司といえば、近年では建築設計や能・浄瑠璃の演出まで手がけているものの、基本的には精緻な技術を用いて生み出される銀塩写真が世界中で高い評価を得てきたアーティスト。《ジオラマ》《海景》《ポートレート》など、透徹したコンセプトと、観る側の目も心も根こそぎ奪う画面の美しさを有した作品群で広く知られる。

 歴史に学び、始原のイメージを現前化させることをたびたび試みてきた杉本博司が、天正少年使節をテーマに据えたのはなぜだったか。本人に話を聞けた。直接の声を交えて、経緯を見てみよう。