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日本中で“2倍長い”「連節バス」が増えている2つの「裏事情」

海外でよく見かける“あのバス”です

2018/10/22
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 いま、日本各地で一風変わったバスの導入が進んでいる。

 その名も「連節バス」。2台のバスを1つにしたかのような見た目のこのバス。ヨーロッパなど海外で見たことがあるという方もいるかもしれない。じつは西日本を中心に連節バスが増えており、全国11都市で導入されているのだ。

ロンドンを走る連節バス(写真後ろ)。欧米など海外の旅先で乗ったことがある人も多いのでは ©getty

じつは日本でも1985年から走っていた

 長さは約18m、バスの後ろには「追い越し注意」という注意書きが書かれている。輸送できる人数も多く、一般的な約10mのバスが約70人程度を運ぶことができるのに対して、連節バスは倍近い約130人を運ぶことが可能だ。

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連節バスの背後には「全長18m 追い越し注意!」の文字が

 この連節バス、日本で試作されたのは1950年代、本格的な運行が行われたのは1985年のつくば科学博のシャトルバスと、その歴史は意外にも古い。つくば科学博は筑波研究学園都市(茨城県つくば市)で行われた。今でこそ「つくばエクスプレス」で都心から簡単にアクセスできる場所だが、当時はまだ開通していなかった。そのため、近くを走るJR常磐線に臨時駅を設け、博覧会会場との間で大量の来場者を輸送する必要があった。そこで連節バスが「スーパーシャトル」の名で導入されたのだ。

 日本の富士重工業製の車体と、スウェーデンのVOLVO製のエンジンと足回りを組み合わせたもので、100台もの連節バスが活躍した。

 しかし、連節バスには法制上の問題があった。実は現行の道路法・道路運送車両法のいずれにも、車両の長さは12mまでと定められており、18mもある連節バスは「法令違反」となってしまうのだ。つくばの「スーパーシャトル」の場合は、指定された道路およびレーンを走るということで特例的に認可されての運行だった。

 そのため、博覧会終了後、公道で使用できない連節バスは、約80台がオーストラリアに輸出、残りの約20台は成田空港内のランプバスとして利用されることとなった。

幕張で路線バスデビュー

 その特例的な認可が普通の路線バスに適用されるようになるには、つくば科学博からさらに10年以上の月日が必要だった。

 1998年になって、千葉市の幕張地区で、一般の路線バスとして連節バスが初めて導入された。当時、JR総武線の幕張本郷駅から幕張新都心への通勤客が非常に多く、幕張本郷駅のバス乗り場は人・バス共に満杯となり、増便も難しくなっていた。

幕張本郷駅と幕張新都心を結ぶ連節バス。朝ラッシュ時には1時間50本以上のうち半分が「連節」だ
幕張新都心の大規模オフィス街

 そこで1台あたりの輸送力を増やすしかないという事情から、連節バスの導入が行われたのである。このとき運行を担当した京成バスが導入したのは10両。車両はつくば科学博と同じく富士重工業の車体とVOLVOのエンジンを組み合わせたものだった。現在も幕張本郷と海浜幕張を結ぶバス路線では連節バスを頻繁に見ることができる。