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遺贈・寄付は未来を変える第一歩

2018/10/24

災害や紛争、貧困、環境破壊や機会の不平等……さまざまな社会課題を自分たちの手で解決していこうと、遺贈や寄付を考える人が増えている。日本で広がりつつある遺贈寄付の状況を専門家に聞いた。


日本ファンドレイジング協会/全国レガシーギフト協会 事務局長 鴨崎貴泰さん
日本ファンドレイジング協会/全国レガシーギフト協会 事務局長 鴨崎貴泰さん

 悲しむ人のいない社会をつくるために、行動したい、社会のために役に立ちたい──。

 こんな思いを実現しようとする人が増えている。そこで注目を集めつつあるのが、亡くなった“後”に財産を寄付する「遺贈」という手法だ。日本ではまだなじみが薄いが、欧米では「レガシーギフト」──人生最後の社会への贈り物として知られている。

「この10年近くで、NPOや公益法人などへ寄付をする人は着実に増えてきています。遺贈寄付もこれから浸透していくのではないかと思います」。日本ファンドレイジング協会と全国レガシーギフト協会の両団体の事務局長、鴨崎貴泰さんはこう話す。

「日本は欧米に比べると寄付の規模は小さいですが、おおもとには助け合いの意識がしっかりと根ざしています。内閣府が実施している社会意識調査でも、『社会に貢献したい』と答えた人の割合は約63%に上りました。ただ、従来は思いの受け皿が不十分で、市民からみるとNPOなどは縁遠い存在でした。社会のために行動したいという思いがあっても、寄付やボランティアという行動には結び付いていなかったのです」

 
 

 思いを行動に変える契機となったのが、東日本大震災だった。「未曾有の大災害に直面し、従前は情報発信が控えめだったNPOや公益財団が『活動のために資金が必要です』と明確なメッセージを打ち出しました。目の前に助けるべき人や地域があり、そのために活動をしている団体があるとわかれば、人々は寄付に積極的になれます。さらにITの進化によって手軽に寄付できるようになったことも後押ししました」

 日本ファンドレイジング協会の『寄付白書』によれば、震災以前の日本の寄付市場は5000億円規模に止まっていたが、2011年に1兆182億円に急増。寄付の活性化は一時的な動きに終わらず、2014年、16年にも寄付市場は7000億円台が継続している。「寄付が役に立ったという実感があると、『次の寄付』へのモチベーションが高まります。東日本大震災による寄付の活性化は、善意の好循環が生まれる転換点になったと思います」

出所:全国レガシーギフト協会HPから作成
出所:全国レガシーギフト協会HPから作成