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医学部不正入試問題は「偉い人」だけで解決できるのか

20年以上医療現場を取材して見えてきた 優れた医師「10の条件」

2018/10/30
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 東京医科大学に続いて、昭和大学と順天堂大学の医学部で、女子と2浪以上の受験生に不利な扱いをしていた疑いのあることが文部科学省の調査でわかりました。昭和大学では医学部長らが行った会見で、補欠者のうち同窓生の子弟を優先的に合格させていたことも公にされました。文科省によると、少なくとも6校で不適切な入試の疑いがあるそうです。

順天堂大学の医学部も・・・(写真は順天堂大学医学部附属順天堂医院) ©文藝春秋

「偉い人」ばかりの委員会

 一連の問題を受けて、全国の医学部と大学病院の責任者が集まる「全国医学部長病院長会議」が10月16日に記者会見を開き、「公平・公正な医学部入試の在り方」を検討する委員会を設けると発表しました。プレスリリースによると、今後、速やかに入試のあり方と規範を示し、年度内には議論を取りまとめる予定だそうです。

 以前、このコラムでも書きましたが、医学部入試で女性差別やOBの子弟を優遇している噂は、私も複数の大学関係者から聞いていました。こうした不公平入試を行っている大学は、本当に6校だけでしょうか。昭和大だけでなく他大学も率先して記者会見を開き、事実をすべて明らかにすべきです。

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 それにしても、全国医学部長病院長会議の「大学医学部入学試験制度検討小委員会」のメンバーを見ると、嘉山孝正・山形大学医学部参与をはじめ、宮園浩平・東京大学医学部長、渡邊卓・杏林大学医学部長など、医学部および大学病院の偉い人たちばかりです。来年度の入試に間に合わせるため時間がなく、仕方がないのかもしれませんが、この人たちだけで本当に「公平・公正な医学部入試」を示すことができるのでしょうか。

「偉い人」ばかりの全国医学部長病院長会議の記者会見 ©共同通信社

 というのも、医学部入試を本気で改革するには、たんに「公平・公正」であるだけでなく、「どんな医師を育てるべきなのか」という視点を入れることが不可欠だと思うからです。それには医学・医療界のニーズだけでなく、社会のニーズも考慮する必要があります。ですから、医学部や大学病院の方々ばかりでなく、患者側や地域医療、厚生行政を代表する委員なども入れるべきではなかったかと思うのです。

 そこで、「どんな医師を育てるべきなのか」という視点から、私なりに医学部入試改革の要望を書いてみました。読者のみなさんも患者や医療従事者など、それぞれの立場で考えてみてください。ヤフーのコメント欄などに書き込めば、小委員会の方々に伝わるかもしれません。

 医学部入試を改革するにあたって、私がもっとも重要だと思うことは、とにかく「優れた医師になれる人材」を選んでほしいという点に尽きます。約20年にわたり、たくさんの医師を取材してきた私が考える「優れた医師」とは、次のような人たちです。10項目をリストアップしてみました。