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時代を問わず衰えない不動産投資の魅力 リテラシーを高める自助努力が問われる

不動産コンサルタント長嶋修氏に聞く

スルガ銀行の不正融資問題などを背景に、ここ数年活況だった個人による不動産投資ブームはいま曲がり角を迎えている――。こうした指摘がある中、専門家は現状をどう見ているか。今後の不動産市況や賃貸ニーズについて話を聞いた。


健全化する不動産市場 相続対策には欠かせない

不動産コンサルタント さくら事務所 
代表取締役会長 長嶋 修 氏
不動産コンサルタント さくら事務所 
代表取締役会長 長嶋 修 氏

 アベノミクスによる大規模な金融緩和や相続税制の改正などを背景にここ数年、個人による不動産投資が大きなブームになった。しかし18年に入りスルガ銀行やTATERUなどによる不正融資・文書改ざんといった問題が顕在化したことで、大きな転換期を迎えている。 

「あと数年、発覚が遅れていたら、その反動や被害はもっと甚大だったでしょう。その意味では早めに問題が顕在化してよかったと思います」――。そう話すのは不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。「今回の問題は行き過ぎた融資の分が剥がれ落ちたに過ぎません。金融機関の融資姿勢はやや引き締め方向にあるものの、不動産投資全体としては健全化しつつあります。不動産投資の魅力は相変わらず衰えていません」と断言する。

 例えば土地オーナーが相続対策を検討する場合、大きな節税効果を期待できる賃貸住宅経営は欠かせない。残された家族には、単にアパートを相続するのでなく、家賃を原資とする「定期収入の仕組み」をのこせるわけだ。「相続対策における不動産は、もはや活用する/しないという話ではありません。資産全体でどの程度活用すべきかという割合の問題なのです」

空間の広さよりも利便性重視の入居者

 とはいえ、本格的な人口減少社会に突入した日本において、賃貸ニーズは今後とも維持されるだろうか。図表①は、東京都心7区の各駅から1分離れるごとに中古マンションの1m²あたりの単価がどのくらい下がってきたかを表したもの。13年時点では、駅から1分離れるごとにm²単価は8000円程度下落していた。それが現在では、駅から1分離れるごとにm²あたり1万8000円以上も下落している。この5年間の間に駅近の立地と、そうでないところとで格差が一層広がったのだ。

 
 

「最近の賃貸物件への入居者は、空間の広さや緑が多いといった居住快適性を捨ててでも利便性、つまり駅から近いことを重視する傾向にあります」と長嶋氏。その理由として「自動車を持たない世帯」と「共働き世帯」の増加を挙げる。駅から徒歩15分で50m²の物件よりも、30m²だけど駅から徒歩数分の物件のほうが人気なのだ。人口減少社会でも安定的に入居者を確保するには、何よりも立地を重視する必要がある。所有している土地の利便性が低ければ思い切って売却し、駅近の不動産に組み替えるのも選択肢の一つだ。

耐震へのコストは将来的に回収できる

 いくら立地が良くても、賃貸住宅だからといって躯体や外観、設備のグレードが低い物件は論外だ。新築する場合でも中古物件を購入するにしても、空室リスクを軽減するには、分譲マンションと同等のクオリティを持つ物件を所有したい。もちろん耐震性も欠かせない。「耐震等級1~3まで3段階ありますが、これからアパートを建てるのであれば基準となる1ではなく、できるだけ2、3にしておきたいところ。その分、費用はかかりますが、その投資は将来的に必ず見合います」

 賃貸住宅経営に魅力を感じつつも、管理・運用を不安に思う人もいるだろう。立地や物件のクオリティ以外にも、信頼できる管理会社を選ぶことが、安定的な賃貸住宅経営を行う上で欠かせないポイントになる。家賃の滞納リスクを回避するためには、家賃保証会社の活用も視野に入れておきたい。

 最後に長嶋氏は「スルガ銀行の不正融資の舞台となった女性向けのシェアハウスも、ほんの少し周辺の家賃相場を調べれば、家賃水準が高すぎるとわかったはず」と話し、勉強の必要性を強調する。オーナー自らが賃貸住宅経営を中長期の事業ととらえ、リテラシーを高めることが不動産投資で成功するための第一歩といえる。