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連載尾木のママで

子供たちの目の輝き モンゴルで出会った「教育の原点」――尾木ママ語る

尾木のママで

2018/11/01
イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

前号より続く)

 モンゴルは教育情勢もまた、想像以上に後れていた。

 首都ウランバートルへの急激な人口流入に対して教育施設整備が追いつかず、殆どの小中学校が午前と午後の二部制か三部制。学期間の休みも多く本当に授業日数が少ない。

 学校の設備も整っていない。教室数は不足、体育館も狭く、トイレは男女共用。階段の段差は不揃いでボクは危うく転びかけた(笑)。教科書や実験器具、楽器も足りず、音楽の授業は二十年間未実施の学校も。図書室は入れ替え制の上、冊数は少なく本棚はスカスカ。

 授業も子供の理解度を顧みず教師が一方的に読み進めるだけ、が定番。教員育成も大きな課題ね。JICA(国際協力機構)は「児童中心型教育支援プロジェクト」など国レベルで教育行政を支援。さらに、青年海外協力隊の若手教員が学校現場でモンゴル教員に理科の実験の方法などを熱心に教える姿が印象的だった。

 一方で教育の原点を目の当たりにする場面も。まず、珍しい理科の実験に臨んだ子供たちの目の輝き。学ぶ楽しさは時代も国も問わないのだと確信した。数年前から始まった障害児教育も、大らかな国民性も相まって障害児も自然に包含するインクルーシブ教育に発展する素地を感じた。

 また、日本への留学熱が高く、視察したJICAの高専留学プログラムでは、一年三か月で日本の高専の授業を履修できるレベルの日本語力を習得する。学生に夢を尋ねると、自動車を製造する技術を導入して会社を設立したい等、口々に大望を語る。自国の課題を認識し改善していこうという強い意欲が生み出す力に圧倒される。モンゴルからの留学生は留学先の大学を首席で卒業する例も多いとか。

 今のモンゴルは勃興期の鳴動に溢れボクの目には戦後日本の姿と重なった。二十年後、日本は追い抜かされているかも。うかうかできないわね。