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「短歌にも読まれる工夫を」――コラムを短歌でサンドした言葉の世界

九螺ささら――この人のスケジュール表

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©高橋由季

 新聞歌壇に採用された哲学短歌をツイートした編集者との「北半球一濃いメールのやり取り」を経て完成した、歌人・九螺(くら)ささらさんの初の著作『神様の住所』が本年度Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した。84のコラムが短歌と短歌に挟まれている。

「時系列で短歌が載っているだけの歌集に、私達は懐疑的でした。工夫のないものは読まれない。それで生まれた構成です。内容に関しては“ベタかもです”“よくある言い回しかもです”と編集者の方のダメ出しが厳しかった(笑)」

 作風は“情念を謳い上げる”という短歌の通俗的なイメージからは程遠い。「アナグラム」の項は「おかえりなさい、おさないえりか。おくりものはもりのおくです。」で始まり、続くコラムで、同じ音を含む言葉は同じ意味を持つ、という命題が、有名な人名アナグラム「Florence Nightingale(フローレンス・ナイチンゲール)→Flit on, cheering angel!(あちこち飛び回れ、激励の天使!)」等で例証される。

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「喜怒哀楽が大きくなり過ぎた時は、客観視が大事。私の場合、散らかった思念や感情を“短歌”という整理箱に一旦おさめるという感じです」

 新潮社の電子雑誌「yom yom」でサンドイッチ形式の小説連載「きえもの」も始まった。

神様の住所

九螺ささら(著)

朝日出版社
2018年6月13日 発売

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「短歌にも読まれる工夫を」――コラムを短歌でサンドした言葉の世界

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