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社員と向き合わない経営者に「働き方改革」は無理だ

2019年の論点100

2018/11/26
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 多様な働き方が可能になると、メンバーのモチベーションも、ロイヤリティも向上。グローバルで、激しい競争を強いられるクラウド分野へ参入してからも、業績は伸びています。いまは人手不足ですが、社員の幸福度が高いと定着率が上がるし、新規採用でも有利。社員の幸福度を上げることは経営戦略的にも正しいのです。

「画一性」から「多様性」へ進化を

 働く時間帯や場所の異なる人たちが同じチームにいれば、情報の共有化が進みます。サイボウズでは個人のメールアドレスは使わず、チーム単位で共有しており、顧客からの問い合わせには、その案件に精通した人が対応する。するとアウトプットの質が高まるし、かかる時間も短い。つまり業務の最適化、効率化が進むのです。能力や働き方の異なる多様な社員を、石垣のように組み合わせて多様性のある組織をつくる。これこそが、これからの時代の経営者の仕事です。

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 そのためには経営者が社員一人ひとりに向き合わなければいけません。小さなベンチャー企業だから可能だと思われるかもしれませんが、大企業は人事部門へ割けるリソースがある。「人材は人財」と口にする経営者は多いのですが、本当にそう考えているのであれば、きちんと投資すべきです。大企業こそ豊富な石(人材)を持っており、多様な石垣が組めるはず。当社には結婚相手の転勤に伴いイタリアで在宅勤務している社員がいます。私たちでは出来ることも限られますが、大企業なら、もっと活躍できる場を用意できるのではないでしょうか。

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 ただ、私のいう「多様性」は、流行の「ダイバーシティ」とは少し異なります。いまダイバーシティというと、女性や外国人の登用となりがちですが、それは性別や国籍という画一的な視点で社員を見ているだけ。黒いスーツの中高年男性ばかりの組織でも、全員の顔が違うように、能力や適性、考え方は違う。つまり多様性はどんな組織にもある。それに経営者が向き合うことが重要なのです。