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ファッションで得られる“うまみ”はコンサバが最も大きい?――トミヤマユキコ×鈴木涼美

トミヤマユキコ×鈴木涼美 #1

note

ギャルはオシャレに気を遣って、膨大な暇を潰してた

トミヤマ 好みのテイストは違うけど、ギャルの人たちってすごくオシャレに気を遣ってるなって思ってました。こまめに肌を焼いたり、肌を露出するからにはムダ毛の処理もしなきゃいけないし。毎日メイクして、それを落として。こっちはノーメイクに前髪パッツン、柄モノとかボーダーのシャツを着て、何より肉体で勝負してないっていうのが、ギャルに比べるとだいぶ楽してたなと。

鈴木 いや、メイク落とすのは3日おきぐらい(笑)。顔から下だけシャワー浴びたりしてたので、当時のギャルってけっこう汚かったんですよ。メイクにしても、高校生って別に暇なので、それぐらいしかやることない。放課後にマックでずっとしゃべってるのも飽きるので、手持ち無沙汰でメイクしたり、日サロ行ったり、プリクラ撮ったり、ルーズソックスの中に雑誌を詰めて伸ばしたり。そういうアジェンダで膨大な暇を潰してた。

 

トミヤマ なるほど〜。膨大な暇っていうのが、私のようなサブカル女とは全然違うんだ。友だちも彼氏もいなかったけど、やることは膨大にあった。本や漫画を読んだり、映画を観たり、夜はドラマを見て、深夜は『オールナイトニッポン』を聴かなきゃいけない。メイクとか自分の体のケアに時間を使ってる暇がなかった。他者の目もそこまで気にしないし、それでギャルより遥かに無頓着になっていって、その無頓着をカバーするために変な柄の服に身を包むっていう。

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鈴木 でも変な柄の服を着てると、注目を浴びちゃいますよね。その視線は別にイヤじゃない?

トミヤマ 変な目で見られるのは全然OK。つまんない人って思われるよりは、「おもしろい服着てるね」って言われたほうがいいですもん。

鈴木 周囲から変な目で見られることに対する恐怖はないんですね。

トミヤマ うん。変な女だなとか、面倒くさそうな女だなって思われるのは別に平気。

潔癖で、性的な話題を避けていた「シノラー」

鈴木 「お、いい女だな」って思われるのは?

トミヤマ それは「うぅ……めんどくさっ!」ってなる。

 

鈴木 女体に向けられる視線を拒絶したくなるのはなんでだろう。90年代後半に流行ったシノラーもそんな感じでしたよね。なんか異常に潔癖で、性的な話題を避けてた。

トミヤマ シノラーも大好きでした。いまだと、ぺことりゅうちぇるとかも好き。かわいいしかっこいいけど、本人の身体性とか性別よりも、ファッションが前面に出てる感じ。

鈴木 でも私はやっぱり、「いい女だな」とか「目のやり場に困るよー」とか言われるほうがうれしい。好きな人とかには「そんな格好で電車乗ったら危ないぞ」とかって心配されたいし、「俺にしか見せんなよ」って言われたい。

トミヤマ そんなこと言われたいんだ……。私が抱いたことのない感情……。

鈴木 だからたやすく女体として認識されるギャルのファッションが好きなんです。変な柄の服を着たまま女体として認識されるのって、よっぽど顔がかわいかったり仕草が女っぽかったりしないと難しいですよね。