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「反対したら非国民的?」韓国現地記者が語る“南北平和ムード”への違和感

元脱北者の記者を取材から外す騒動も

2018/11/16

「幼い頃、金正日からの贈り物にみかんが入っているとうれしくて大喜びしたものです」(50代の高位クラス出身の脱北者)

 北朝鮮では「みかん」は高級品。最近では中国産のみかんが売られているというが、「高価なため、一般住民はなかなか手が出せない」(同前)そうだ。

今年のみかんは格別に甘いと言うが……。 ©iStock.com

 そんな北朝鮮に11日から12日にかけて、200トンものみかんが韓国から贈られた。10キロ詰めが2万箱。軍用機に積まれて平壌に届けられた。

「9月の南北首脳会談の際、北朝鮮から松茸2トンが贈られた。その感謝の印として答礼した」(中央日報11月12日)

 韓国政府は北朝鮮にみかんを送った背景についてこう説明したが、「とってつけた言い訳」と韓国紙記者は苦笑する。

「今が旬と言えば旬の果物ですが、このみかんには、統一省次官と青瓦台(大統領府)秘書が同行しました。金正恩委員長の年内訪韓に向けての動きといわれています。

 みかんは青瓦台の予算か大統領の活動費から出ている可能性が高いといわれ、金委員長の訪韓を次の米朝首脳会談へつなげたいという文在寅大統領の思いが透けて見えます」

 北朝鮮に贈られたみかんは韓国のみかんの名産地、済州島産。金正恩委員長が口にした済州島の漢拏山登頂も象徴しているといわれ、「“済州島産みかん”はこれ以上ない贈り物だったのではないでしょうか」(同前)。

「平壌宣言」を大統領権限で無理やり裁可した文大統領

 みかんに限らず、9月の南北首脳会談以降、文大統領の北朝鮮への前のめりぶりは際立っていて、10月には、北朝鮮関連で物議を醸した“事件”が続いた。

9月の南北首脳会談より ©時事通信社

 始まりは、9月の南北首脳会談で署名された「平壌宣言」の批准を文大統領が裁可したことで、韓国内では野党を中心に「国会の承認がない、憲法違反」と批判が噴出した。別の韓国紙記者の話。

「『平壌宣言』は4月に発表された『板門店宣言』を具体化したもので、開城工業団地や金剛山観光の再開など南北の経済交流が事細かに盛り込まれています。発動すれば韓国財政は大きく動きます。

 韓国では、南北関係の発展に関する『南北関係発展法』で、『重大な財政的負担』が発生する場合は、国会での承認を得なければなりません。しかし、文大統領は大統領の権限で強行裁可してしまった。こうなると、今後、南北間の合意の中でたとえ韓国の財政に関わる事柄であっても大統領がねじ込んでしまう可能性があり、非常に危険です」