文春オンライン

140年の矜持を受け継ぐ谷島屋浜松本店は常に新しい

2015/01/10

genre : エンタメ, 読書

棚にも行間はある。一等地だけじゃないひそかなオススメ

なにやら書き込む中土居店長。

 エスカレーターを上がっていくと、店舗の正面、一等地の棚がある。お約束の時間よりも少し早くついて、店内を見せていただこうと思っていたら、棚の前で何かを書いているのが中土居店長だった。厚紙のカードなどに書いたPOPを店内に貼るのはよくあるが、中土居流は、マスキングテープを棚板に貼り、サインペンなどで直接書き込んでしまうワザ。エプロンのポケットに、何色かのマスキングテープが入っていて、その場で貼り付けてはなにやら書き込んでいく。注目のミステリー『その女アレックス』には一言「4回驚く」のみ、『教団X』には「中村文則、最高の作品」、その他、「地元作家!」、「今一番好きな女流作家です」などの惹句や、ちょっとした感想、作品の特徴、エピソードなど、カードだとどうしても、後ろに本が隠れてしまう欠点があるが、これは、ちょっとした余白のメモのようだ。その場でさっと書く即興性が、かえって面白い。

マスキングテープにメッセージを。
エスカレーターで上がっていくとまず目に入る一等地の棚。

 一等地の棚には、取材時、発表されたばかりの『このミステリーがすごい! 2015年版』国内編、海外編。その隣には、葉真中顕(はまなか・あき)さんの『絶叫』を積み、CM映像を繰り返し流していて、印象的だ。この棚は店として大展開する場所、その裏手には、小さなコーナーだが「店長の棚」があって、こちらはもう少し店長の好みを出した場所になっているようだ。その一等地の隣には、静岡書店大賞の入賞作品が大量に陳列されていた。

 一等地ばかりではない。店内のあちこちに、フェアや仕掛け、サイン本、イベント連動の棚など、飽きさせない工夫がある。マスキングテープのメッセージを探すのも楽しい。カフェと本屋とで、一日過ごしても飽きないかも。

ADVERTISEMENT

裏手の店長の棚。松家仁之さん、宮下奈都さん、畑野智美さん、塩田武士さんと、オススメに好みが見えて、ちょっといい感じ。
中土居一輝さん、『絶叫』とともに。

【本の話WEB 読者にオススメ】

 中土居店長に本の話WEBの読者へのオススメ本を聞くと、葉真中顕さんの『絶叫』(光文社)。とにかくこの本を読んでほしい。何を言ってもネタバレになってしまうが、主人公が、ほんとに細かい分岐点なのだけど、どんどん人生がずれていく様子に自分を重ねてしまう。いっしょにこれを読んで絶叫してほしいとのこと。その熱意につられて購入。原稿を書き上げる前に読み始めたら止まらないので、ちょっと自粛中。

関連記事