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71歳ジャンボ尾崎はなぜ引退しないのか? 「北の湖状態だよ」の真意

2018/11/22

「まったく、北の湖状態だよ……」

 今季最終戦、ダンロップフェニックストーナメント2日目を終え、最下位となる通算17オーバーで予選落ちしたジャンボ尾崎は開口一番、そうつぶやいた。

10月のマイナビABCチャンピオンシップ。2日目、5番H終了後(アウトスタート)、尾崎は腰痛のため途中棄権した

丸5年予選突破がない

 北の湖は優勝24回の大横綱である。ただ、晩年は、ほとんど勝てず、かつ休場続きだった。横綱は自分で力が落ちたと判断したとき、自ら身を引くのが慣例となっている。外野からはもう引退すべきだと言われつつ、それでも北の湖は最後の最後まで土俵にしがみついた。

 尾崎は、そんな横綱の姿と、今の自分の姿を重ねたのだ。確かに、たどった道のり、晩年の両者の立場は、そっくりである。

 近年の尾崎は、レギュラーツアーで戦える状態にはない。2013年4月のつるやオープンゴルフトーナメント以来、丸5年間、予選突破がないばかりでなく、頻繁に棄権する。今季も7戦中4戦は2日目に途中棄権した。

“半永久的に”ツアーに参加できる権利

 もう、引退すべきではないか――。

 ここ数年の日本ゴルフ界の尾崎に対する大方の見方も、こうだ。

 個人競技であるゴルフは、プロ資格を得さえすれば、試合に出る出ないは別として、プロ選手でい続けることは可能だ。そんなプロゴルファーの中で、尾崎がさらに特殊なのは、永久シードを持っているからだ。日本では25勝以上すると、永久シード資格者となり、半永久的にPGA(レギュラー)ツアーに参戦できる。つまり「引退すべき」というのは、PGAツアーへの参戦を自粛すべきだという意味である。ゴルフにはシニアツアーと呼ばれる50歳以上の試合もあるが、尾崎はシニアツアーを戦いの場ではないと考えているため、一度も出場したことがない。

1986年の日本オープン選手権。中嶋常幸、尾崎将司、青木功(左から)。“AON”で一線を退いていないのは尾崎だけになった ©文藝春秋

 当然のことながら、PGAツアーに出場できる選手の数は限られている。尾崎がシード権を行使すれば、必然、そのぶん出場枠が1つ減る。言い方を変えれば、他の選手のチャンスを奪っていることにもなる。同じく永久シード保持者で、今季PGAツアーのメジャー大会卒業を表明した中嶋常幸はこう話していたことがある。

「棄権するぐらいなら出ないで、若い選手に(出場)枠を譲るべき。それが永久シードの務め」

 至極、真っ当な意見である。

 だが尾崎の中に「譲る」などという発想は微塵も感じられなかった。