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「全国紙」でなくなる? 産経の“感情の起伏”が激しかった「11月16日のこと」

保守おじさんが「揺れている」

2018/11/23
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保守おじさんが「揺れている」

 さらに3面には「プーチン氏、日本揺さぶり」という小見出しが飛び込んでくる。こちらも1面とは違い、不安と警戒心がにじみ出ている。

 ここからわかることは、保守おじさんにとって「2島返還」に舵を切った今回の交渉はとても複雑だということだ。保守おじさんが「揺れている」のである。

 4島返還は悲願。しかし産経が応援する安倍首相は2島返還を軸に交渉を始めた。これは、一体どう受け身を取ればいいのか?

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©︎AFLO

 保守おじさんの心が揺れているのが手に取るようにわかった。新聞の読み比べは複数紙を読むことだが、時と場合によっては「同じ新聞」の「違う紙面」を読み比べるだけでも十分面白いのである。今回の産経がその好例だった。

古新聞で掃除が楽になります

 ほかに、最近たまらなかったのは新聞週間の初日(10月15日)であった。

 新聞週間のスタートにあたって他紙は新聞の意義とか使命を懸命に読者に説いていた。そんななか産経が放ったのは、

「新聞週間 掃除に活用」「新聞紙で窓も食器もピカピカ」(10月15日)

 だったのである。

「古新聞の使い方を工夫することで掃除が楽になる」と読者にプレゼンしていた産経。

 節約アドバイザーのコメントをはさみながら「読む以外の新聞の活用法」を説いていたのである。新聞の購読を続けてもらうための、この現実的な開き直りにはうなってしまった。

 

 しかしこれらの記事を読むと、「今いるお客さん」を離さないための防戦一方の新聞の姿を感じてしまう。宅配での購読者数を飛躍的に伸ばせる時代ではないのだろう。だからこそ「紙の全国紙からデジタルのハイブリッドに業態を変える」のだろう。これは産経だけでなくすべての新聞の課題のはずである。

 全国紙の看板を下ろすという産経の決断は果たして英断となるのか。新聞の新しい未来となれるのか。

 野次馬ながら注目したい。

「全国紙」でなくなる? 産経の“感情の起伏”が激しかった「11月16日のこと」

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