昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

食べログを超えた、使えるグルメ情報はなにか

食のプロが明かすおいしい店発掘術(2) 大崎裕史×伊藤章良×子安大輔

genre : グルメ

──食べログのトップレビュアーの影響力って、実際にはどれくらいあるんでしょうか。人気トップレビュアーが高評価をつけた店は短期間で一気に点数が上がったりする、という話もあるようですが。

大崎 あるとき、もうちょっと点数がよくてもいいはずなのになあ、と思うラーメン店を調べてみたことがあったんです。やはり、有名なトップレビュアーが厳しい点数をつけていました。この店だけじゃなくて、彼が厳しい点数をつけている店は軒並み下がっている。

 そのとき、トップレビュアーが厳しい点数をつけると思いっきり総合評価が下がってしまうというのは、いくらなんでも彼らに影響力を持たせすぎではないかと思いましたね。

子安 それに関しては、食べログの運営側も、これまで飲食店側への配慮があまりにも足りなさすぎたと反省しているようですよ。点数が0.5下がることによって店側が被る損害についてもっと想像力を働かせるべきだったと。だから、食べログのアルゴリズムも変わる可能性はまだまだありますよね。

食べログのトップ画面

大崎 その逆で、だれかがいい点数をつけると、周囲が釣られていい点数をつけるから、点数がどんどん上がっていく傾向もあるんですよね。

 ラーメン業界にはかなり前から語り草になっている話題があります。かなり前に出版されたんですが、石神秀幸君が協力した漫画『ラーメン発見伝』(漫画・久部緑郎、原作・河合単、協力・石神秀幸)で登場人物のラーメン店主が「ヤツラはラーメンを食べているんじゃない。情報を食べているんだ」と言うシーンがあるんですね。

 そのセリフを読んだ時は、我々ラーメン評論家が批判されているとかなり悔しい思いをしたんですが、それから10年以上経って改めて振り返ってみると、まさにその通り。料理じゃなくて情報を食べている人たちがたくさんいるという気がしています。

──鮎の煮干し出汁のラーメンでは売れなかった店主が、ニンニクを揚げた牛脂を加えた濃口ラーメンで儲ける話ですね。

 鮎出汁のうまさはわからないのに、本来は鮎の風味が消えている牛脂の出汁のスープを飲むと途端に鮎の香りがわかると言う客が多いと嘆く店主が印象的でした。

大崎 逆にいうと、食べログで4.5の店に行って、あまりおいしくないと感じても、そう言うのはなかなか難しくて勇気のいることにもなっている。自分も高い点数をつけないと自分のレビューの価値を疑われてしまうんじゃないかと怖くなる部分があるんじゃないかと思うんです。

 つまり、料理が美味しいのか、美味しくないのか、正直にいえばわからない人もけっこういるんじゃないかと思うんですよ。で、そういう時は、とりあえず自分が信頼しているレビュアーがつけたのと近い点数をつける。

伊藤 ははは、大半はそういう人たちなんじゃないですか?

インスタグラムもむずかしいねえ

大崎 それとは逆に、定見なく叩いている人たちがいるのも事実で、残念ながら、そういう人たちのほうが注目を浴びる。辛口評論家みたいな感じで名前がどんどん売れていくわけですよ。それって、よくない傾向だと思いますね。

 私は食のレビューって、結局は食べ物に対して愛があるかどうかだと思うんですよ。ラーメンでいえば、店主がラーメンに対して愛があるかどうかがすごく重要で、愛がある店主の店を、けなしたり叩いたり、店を潰そうとしたりなんて絶対思わないわけです。

伊藤 その通り、みんなもっと楽しく食べて、おいしかったという話だけ書けばいいと思います。

子安 でも正直なところ、食べログを批判する人は、食べログを必要以上に意識しているんじゃないかなあ。もう少しクールに向き合えばけっこう使えるいいサイトなのにと思います。

 それに、ほかのウェブサービスで食べログに代わるものがあるかと考えると悩ましい。Rettyは伸びていますが、個人的には、信頼のおけるいいレビュアーが少ないので、おいしい店探しという観点で使えるかというと現時点では疑問ですね。

インスタグラムを「#ラーメン」で検索したら

大崎 インスタグラムもむずかしいねえ。若者に「インスタでラーメンを検索しています」って言われた時にはカルチャーショックでひっくり返りそうになりました。「写真で選ぶんですよ。写真だけで充分じゃないですか」といわれたんですが、若者は写真だけを見てこの店に行きたいと思うんですかねえ。私は文章がないとよくわからない(笑)。

 ミシュランも買ったことないなあ。ミシュランに載ったかどうかはネットを見れば全部わかるし、食べログにも「ミシュランで星を取ったお店」と書かれてある。

伊藤 同感ですね。

大崎 食べログを使い始めた時に、もう少しいいツールがほしいと構想していたのと近いのが「テリヤキ」でした。少数の信頼できる人たちがお店を紹介してくれるサービスで、これが登場した時、理想のツールができたとすぐ登録したのですが、実はあんまり使っていません。使い勝手が今ひとつなのかな。

 食べログは地図として優秀なのと、やっぱりお店を調べる時にGoogle検索をかけると、たいがいトップに出てくるんですよね。やっぱりこれはすごいことですよ。

テリヤキは食キュレーターの実名投稿サイト

子安 すべての指標、ジャンルを1つのサービスで包含するのはおそらく不可能でしょう。オールアバウト的な発想になりますが、おいしいラーメン屋を知りたいなら大崎さん、鮨屋ならこの人という、自分なりのオーソリティを複数もつと信頼できる情報に近づきやすくなる。

 そういう意味では、網羅化したデータをもう一度細分化していくという「ニッチ化」はこれからのグルメサービスの流れになるかもしれませんね。

※食のプロが明かすおいしい店発掘術(3)では、おいしい店を探すためにはどうすればいいかという具体的な手法について語り合っていただきます。乞うご期待!

構成=山下久猛(フリーライター)

はてなブックマークに追加