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「あいみょんを懲戒処分後に聴きました」“白ブリーフ判事”の数奇な人生

裁判官・岡口基一インタビュー #2

検事の体育会系のノリは無理だなと

――弁護士になろうとは思わなかったんですか。

岡口 弁護士は失敗すると貧乏になっちゃうでしょう。それに裁判官をやれば、いつでも弁護士になれると思ったので、選択肢にはありませんでした。

――検事は?

岡口 4カ月検察修習はやりましたけど、あの文化は合わなかったです。体育会系のノリが無理だなと思って。飲み会とかすごいんですよ。事務官はほとんど家来みたいな感じでした。次席検事となると決裁権があるので、もう神様みたいな。

 

――『HERO』みたいな。

岡口 ああ、そうですね。あのドラマは検察の上下関係を忠実に描いていると思いますよ。検察官は最初の15年が地獄で、最後の15年くらいが天国。裁判官の文化にはそういうのがないですね。裁判官は書記官に対しても全然えばらないし同じチームの仲間という感じです。

大阪時代、女王様に縛られちゃった

――最初は浦和地裁に配属されて、それからけっこう転勤されていますね。

岡口 基本、3年に1回は転勤するものなんです。建前としては、同じところにずっといるとその地域の人達と癒着してしまうからという理由。実際は、当局が人事権を行使する「統制権力」を見せつける意味の方が多いと思いますけどね(笑)。

――印象に残っている勤務地はありますか?

岡口 大阪は衝撃的でしたね。コンビニのレジで店員さんと話をしていると、横から知らない人が話に入ってくるんです。「なんじゃ、ここは」って、楽しかったですね。サウナでもそうでした。知らない人が、ごく自然と話しかけてきてくれる。ここは本当にいいとこだと思いました。

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――大阪もやはり3年で転勤に?

岡口 そうです。まあ、ちょうどいい期間でした。いい街なんですが、よそ者が奥まで入れないような雰囲気はあるんですよね。ちなみに、ツイッターに私が裸で縛られている写真をあげたことがあるんですが、あれも大阪の店です。

――SMクラブかなんかですか?

岡口 SMクラブの隣にある普通の飲み屋です。女王様が仕事帰りによく来てたんですよ。で、あれは店を閉めた後だから朝の3時くらいかな、女王様が来てるから、冗談で、誰か縛ってもらおうって話を飲み屋の常連さん達としてて、じゃんけんに負けて、本当に縛られちゃったんです。

――深い時間に……。お酒好きなんですね。

岡口 九州ですから、焼酎が好きです。でも最近は麦の「兼八」ばかり飲んでます。あと米の「鳥飼」も好き。水割りです。飲むときは朝3時くらいまで行きますね。頭がボヤーっとしてきて、気が遠くなっていく感じが好きで。眠気マックスになった時の……なんか私ね、あの状態ですごく気持ちよくなるんですよ(笑)。