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「あいみょんを懲戒処分後に聴きました」“白ブリーフ判事”の数奇な人生

裁判官・岡口基一インタビュー #2

若い裁判官は少々スノビッシュですね

――市民の裁判官に対するイメージって「真面目」だと思うんですが、岡口さんは大きくそれを外れていきますね。

岡口 裁判官は基本的に真面目です。でも、最近の若い裁判官は、少し真面目すぎるのではないかと感じています。上に言われると、その通りに信じてしまう純粋培養なところを感じます。

――特に若い人に多いんですか。

岡口 「最近の若い者は……」って、こういう言い方あまり好きじゃないんですけど、昔は個性的な裁判官がたくさんいたんですよ。暴行殺人をした少年に対して、さだまさしの「償い」の歌詞を引用して紹介した山室恵さんとか。マツコ・デラックスさんも山室さんのこと、知っていましたね。

 

――判決の後の「説諭」で裁判官の個性が出ると聞いたことがあります。

岡口 そうですね。それから、これは昔からそうなのですが、若い裁判官は少々スノビッシュです。私の若い頃もそうでした。

――知識に偏っているというか。

岡口 自分が正しいと思っちゃうので、柔軟性がないんです。例えば民事保全は若い判事補であっても一人でできちゃうんです。それで、若いのが一人出てきて「これはこうなんですよ」って決めつけちゃって、ベテラン弁護士がカチンときちゃうケースもあります(笑)。大失敗を繰り返しながらだんだん鼻が低くなっていくんですけどね。いま法曹人口については議論されているところですが、弁護士が過当競争になっているでしょう。その中で、弁護士以外の道で無難に行きたい人は裁判官か検察官を目指すわけですが、そこに裁判官としてのモチベーションがしっかりとあるかどうか、これからさらに大切なポイントになってくる気はしています。

 

尊敬する裁判官は「雲助裁判官」です

――岡口さんが尊敬する裁判官は誰でしょう。

岡口 うーん、難しい質問ですね。私みたいにチャラチャラしていない人はたくさんいらっしゃいますからね(笑)。あ、「雲助裁判官」って知ってます? 判決で「タクシー運転手は雲助まがい」と書いてしまった方。実はこの方、事件の扱い方が丁寧で、申請があれば証人は全部調べるし、時間と労力をかけて一つの事件に取り組まれるので法曹界の中では非常に評価が高かった人なんです。民事の裁判官でしたが、原告も被告もお互いに納得して終わる裁判が多くて、だから控訴になることはほとんどありませんでした。ほとんどの事件が原審で確定しちゃうなんて、奇跡に近いんです。ですから、私は「雲助裁判官」を尊敬しています。

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――個人的にお付き合いはあったんですか?

岡口 ないです。ただ、いろんなところでいい評判を聞くんです。雲助さん、いい裁判官なんですよって。とにかく尊敬できるのは、時間をかけて事件に向き合う姿勢ですね。今って、処理能力の速い裁判官が出世する。残念なことですよ。