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「あいみょんを懲戒処分後に聴きました」“白ブリーフ判事”の数奇な人生

裁判官・岡口基一インタビュー #2

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ダンベル二頭筋カール30回、腹筋50回……

――小説はお読みになりますか?

岡口 読まないんです。というのは、実際の事件のほうが面白いから。本当にこの世の中は、いろんなありえないような話が起こると、つくづく思っています。逆に、作られた話って、どうしても「作られた感」がみえちゃう。

――体格がいいのは筋トレをしているからですか。

岡口 ダンベルフライを30回ずつ2セット。スクワットも30回を2セット。それからダンベル二頭筋カール30回。腕立て30回。腹筋50回。これを毎日家に帰ったときと寝る前にやってます。

 

――ETVで話題になった「筋肉体操」に弁護士の小林航太さんがムキムキの身体で出演していましたけど、お付き合いはあるんですか?

岡口 1回飲んだことありますよ。彼がまだ司法修習生だった頃に。小林さん、飲み会に白ブリーフ持ってきて「これにサインください」ってねだられました。サインしましたけどね。どういうトレーニングしてるんですかって、そんな話はしましたけど、向こうはプロですからね。こっちは全然我流だなって思いました。

くらーい部屋でじっと一人、くらーい音楽を聴いてる

――音楽は聴きますか?

岡口 聴きますよ。でも暗いのが好きなんですよ。ショスタコとか。

――ショスタコーヴィチ、好きなんですか。

岡口 高校のブラスバンドで県大会に出たときにやった自由曲がショスタコの交響曲5番4楽章だったんです。テナーサックスだったんですけどね。それで、これはいい曲だって知って、それから10番や12番を聴き、それでもうハマってしまいました。

――スターリン体制に迎合したフリをしながら、実は抵抗しているという生き方に共感しませんか?

岡口 シンパシー持ってます(笑)。ショスタコは交響曲4番みたいな、抽象度の高い音楽をずっと書きたかったんだと思うんです。でもあの体制下で、もっと人々を高揚させる音楽を作れと言われて、5番「革命」をある種の諦念を持ちながら作曲したんじゃないかな。だから指揮者によっては、ショスタコの音楽を非常にアイロニカルに解釈して演奏しますよね。

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――ショスタコに限らず、クラシック音楽はお好きなんですか。

岡口 家が教会だったので、環境としてはクラシックがそばにありました。あと、祖父が遺したレコードがいっぱいあったんですよ。バックハウスのピアノ、カザルスのチェロ、フルトヴェングラー指揮によるオーケストラ。名演を小さい頃から聴いてました。貧乏だったから、レコードを聴くくらいしか楽しみがなかった。幼稚園のときはベートーヴェンのピアノコンチェルト4番が好きだったな。今でも第1楽章は大好きです。

 

――落ち込んだときに聴く曲はありますか?

岡口 やっぱりショスタコなんですけど、交響曲12番の2楽章とか、10 番の1楽章とか、5番の3楽章とか暗めのところだけ(笑)。

――そのほうが落ち着きますか。

岡口 なんか落ち着きますね。くらーい部屋でじっと一人、くらーい音楽を聴いてるのが一番落ち着く。