文春オンライン

「東大王」鈴木光が書いた「私が考える、これからの教養のかたち」

2019年の論点100

2018/12/04
note

初めてのプレゼンで学んだこと

 国籍も価値観も教育も異なる、多様なバックボーンを持った同世代の学生達に自分達の考えたプレゼンテーションがどの程度通用するのか、生まれて初めて不安を覚えました。

 でも立ち止まっている時間はなかったので、まずは膨大な英文資料を読み漁る事からはじめました。麻布高校、筑波大附属高校、それぞれの代表計6人で担当を決め、スカイプでやり取りしながら資料を作り、1週間に2、3度持ち寄っては意見交換をするという作業を何か月も続けました。それぞれが自分の得意な分野を担当し、私は資料の分析と、プレゼンテーション資料の英訳を行いました。全員が全力を尽くし、朝の3時くらいまで資料を作成する日々が続きましたが、どうにかプレゼンテーション本番の日を迎えることができました。大きなテーマでしたし、討論中は厳しい意見も飛び、世界の常識と日本の常識との隔たりに愕然とする一幕もありました。

 

 しかし、発表が始まる前と後では、各国代表の私達への接し方は全く変わりました。私達を認め仲間に入れてくれたのを肌で感じました。意見の違い、思想の違いがあっても、誠心誠意課題に向き合いどんな質問や批判にも真正面から取り組むことでお互いが譲歩できる着地点も生まれるし討論を重ねることでお互いの信頼関係も生まれることを知りました。フランス代表の先生から、難しいテーマだったが、とても良いプレゼンテーションだったというお言葉をいただいた時には、張りつめていた気持ちが一気に安堵の気持ちに変わったのを覚えています。

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ベストではなくてもベターな答えを見つけ出す

 私達の発表の後も、各国が抱える問題をテーマとした発表が続き、中でもインドの代表が発表した女性の人権問題は私に大きな影響を与えました。それが後に東大推薦の論文のテーマにつながっていきます。

 

 私はこのサミットに参加させていただいた事で、討論で戦えるレベルの英語力の重要性と世界各国が抱える問題の深刻さを知る事となりました。しかし、それがどんなに難しい問題であっても、自分の意見を伝え、相手の意見を汲み取り、ベストではなくてもベターな答えを見つけ出す事が、社会を良くする一歩なのではないかと思うようになりました。

 私はこのサミットの期間、自分の英語力では、とても質疑についていけないと思い、毎日、翌日に発表されるテーマの内容を予習するようにしました。それは毎日深夜3時過ぎまで続きました。朝は予定されているプログラムをこなすために6時には起きないといけなかったので、寝不足で辛いと思う事もありましたが、ここで培った英語の力とプレゼンテーションの力が、並行して参加していたスタンフォード大学e-Japanプログラムに役立つこととなります。