文春オンライン

助かりませんからね、私たち30代、40代の世代は

人生の最後までレールが続いてないことが確定している

2018/11/29
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人間の成功というものは、正しくリスクを取れた人がつかむもの

 翻って、そのような立派な経営者でも商品会議の席になると数百万数千万という相応の費用を払い、その道のプロを雇って得た知見を「いや、キャバクラで一緒になった女子大生が言っていたんだけどさ」という枕詞とともに自信満ち溢れる態度で全否定する姿を見ると、人間とはかくも愚かな、それでいて愛すべき存在なのだということを改めて思うわけであります。大事な商談の席で経営者の横に奇抜な姿をした占い師が同席していたり、壮大なビジョンを掲げるハゲが少しでも交渉を有利にしようと怒ったふりをして灰皿を投げてくることも起きるのが世の中です。考えれば分かる通り、人間の成功というものは、正しくリスクを取れた人がつかむものであって、頭が良いかどうかはあまり関係ないのでしょう。だって、そこまでたいした売上があるわけではない会社の社長が勢いに任せて月にいこうとかフラワーなことを平然と記者会見してしまうような社会ですよ。ナイスチャレンジというか、リスクの取り方がうまいなあと思いつつも、いざ冷静になってみるとそれってプロモーション以外の何者でもないよなって世間が思い直すころにはもう次のゴルフネタにみんな「これが本当のプロゴルファー猿だったのか」と半笑いで飛びついているわけでして、成功してお金を持ち全能感に浸っている人の下で働く人たちはきっと大変なんだろうなと思います。

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 そういう「まあ、お前はその性格でそのポジションだったからそういうリスクを取ったらうまくいったってことだよね」という話を、ある種の成功哲学的にその辺の若いサラリーマンやキラキラしたOL相手に「良い人生を歩むためにセルフブランディングしましょう」とか洗脳をしようとするのだから、結構怖ろしい世界になってきました。もちろん、そういう精神世界には根強いニーズはあるし、教条的な何かで救われる人が少なくないのもまた事実ですから、大の大人が自己啓発にのめり込むのはインフルエンザの流行とたいして変わらんものだと思うわけです。インフルエンザで命を落とす人がある一方、自己啓発で人が精神的に死ぬという意味で。