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「殺人はウソでした」 69歳の死刑囚が“告白”を覆した理由 

「嘘を書いた――」

 死刑確定後、警察に出した「上申書」で新たに2件の殺人を告白した指定暴力団住吉会系元会長、矢野治被告(69)。11月21日、東京地裁で行われた被告人質問で、矢野は自身の“告白”を覆した。

03年当時の矢野治被告(「FNNニュース」より)

 4人を射殺した「前橋スナック銃乱射事件」(2003年)で14年に死刑が確定した矢野。すると同年と翌年、96年に住吉会系元幹部ら3人と共謀し、神奈川県伊勢原市内で津川静夫さん(当時60)の首を圧迫して殺害、98年にも単独で東京都豊島区内で斎藤衛さん(同49)の首を圧迫して殺害したことを告白し、殺人罪で起訴された。

 だが、関与を認めた2事件は、いずれも被害者の白骨遺体が見つかっているものの、「上申書」以外に殺害そのものに関する証拠は乏しい状況だ。裁判担当記者が法廷での矢野の様子を語る。

「死刑囚は長年の身柄拘束と刑執行への不安から精神的に不安定になることが多いとされます。しかし、矢野被告にはそんな印象はありません。両耳に補聴器もつけ、小柄な老人という風貌ですが、法廷では堂々としています」

 11月12日の初公判以降、矢野被告は、伊勢原事件については「(津川さんの)名前も知らない」、豊島事件では「私は殺していない」と無罪を主張し続けている。