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連載春日太一の木曜邦画劇場

緻密な描写とサスペンス これぞ大人向けアニメ!――春日太一の木曜邦画劇場

『妖獣都市』

2018/12/04
1987年作品(83分)/ジェネオン エンタテインメント/レンタルあり

 アニメは近年では市民権を得ており、内容的にも産業的にも映画界を支える一大ジャンルとして認知されている。

 ただそれでも、一部の有名監督やプロダクションの作品を除いて、アニメとは子供やアニメファンに向けた作品ばかりだと思っている人もいまだに少なくなかったりする。

 そういう人にはぜひ、今回取り上げる『妖獣都市』を観ていただきたいと思う。ハードボイルドな世界設定と人物描写、容赦ないバイオレンス描写、艶めかしいエロス描写、緻密に練り込まれた物語――、見事なまでの「大人向け」のアニメ作品である。

 舞台は近未来の東京。人間界と魔界の妖魔は長い抗争を経て、互いの共存のための不可侵協定を結ぶことになる。調印式にはイタリアの魔道師・マイヤートの存在が必要なのだが、調印式を妨げようとする魔界の抗戦派は刺客を放ってマイヤートの命を狙う。一方、共存を実現するために人間界、魔界の双方に「闇ガード」と呼ばれるエージェントが存在しており、抗戦派と激しい戦闘を繰り広げていた。そしてマイヤートの護衛のため、人間界からは滝、魔界からは麻紀絵という二人の腕利き闇ガードが派遣される。

 妖魔たちは人間の姿を模することができ、どこに潜入してどこから襲ってくるかは分からない。中でも美女に変身して男を誘惑する妖魔は油断している間に魔力を使って襲いかかり、廃人になるまで精力を吸い尽くすという。しかも困ったことにマイヤートは大の女好きで、フラフラと女性たちの誘惑に乗って妖魔に襲われ、滝と麻紀絵は振り回される。そして、戦いを通して滝と麻紀絵の距離は近づく。

「危険すぎる」「言ったはずよ、任務には命を賭けているって」「まだスリーサイズを聞いてないぞ」といった、滝と麻紀絵の間で交わされる小洒落た会話。細部までリアルに描き込まれた背景や小道具と、陰影の濃い照明などのケレンを融合させたスタイリッシュな映像。全く先の読めないサスペンスフルな展開。こうした実写ノワール映画のような世界観に、妖魔たちのグロテスクな造形とヌルヌルした不気味な動き、そして彼らとの魔力・霊力を駆使したアクションというアニメならではの要素が加わり、その上にポルノ映画ばりに濃厚な濡れ場までいくつもある。まさに極上の、大人のエンターテインメントだ。

 驚かされるのは、終盤の展開。傲慢でスケベで役立たずの老人にしか思えなかったマイヤートには、実は真の目的があったのだ。それが何かは観てご確認いただくとして、その鮮やかなドンデン返しに至るまで、とにかく飽きさせない、刺激的な作品である。