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なぜプリキュアの敵役に「ブラック企業」が抜擢されたのか?

東映アニメーション 内藤圭祐プロデューサーにインタビュー

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帝王切開での出産を真正面から捉えたエピソード

 一方で、「子育て」がテーマとなっている点もまた脚光を浴びている。

「15周年のプリキュアを制作するにあたって、歴代のプリキュアたちに劣らない個性を目指して“最強”を探った結果、“母親”を描こうと行き着きました。育児をしながらお仕事も頑張る姿を通して、プリキュアの葛藤や成長を描けると思いました」

 中でも、帝王切開での出産を真正面から捉えたエピソード(第35話)は大きな反響を呼んだ。それもそのはずで、ドラマ『コウノドリ』も手掛けた脚本家・坪田文氏が今作のシリーズ構成として参加している。

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ロスジェネ世代が由来の「ジェロス」。発言にカタカナ英語多め ©ABC-A・東映アニメーション

「これまでもプリキュアでは多様性をテーマに、理想や正解だけを追い求めるのではなく、いろんな可能性があるということを提示してきました。夢も、家族も、仕事も、もちろんお産にもいろんな“かたち”があるということを提示していきたいと考えているんです」

13歳のプリキュアが達観した大人にどう立ち向かっていくか

 年明けに向けて、物語はプリキュアとクライアス社とのラストバトルへの伏線が張られていく。

「いろんな挫折や失敗といった経験を経た結果、未来への歩みを止めようと決心した大人(=クライアス社)と、ポジティブに未来は輝かしいものだと信じる子ども(=プリキュア)との対比もひとつの見どころです。経験値だけでは敵わない13歳のプリキュアが達観した大人にどう立ち向かっていくか、終盤に向けての見せ場となっていきます」

団塊の世代から名付けられたパワハラ部長「ダイガン」 ©ABC-A・東映アニメーション

 プリキュア公開中の映画館では娘連れのお父さんの姿が多く見られる。お母さんはショッピングなどで羽を伸ばす。そこには、お父さんと娘の会話を育み、仕事に育児に頑張るお母さんにひとときの休息を与えるプリキュアの姿が確かにあった。

 

なぜプリキュアの敵役に「ブラック企業」が抜擢されたのか?

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