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北朝鮮に毎月通う記者が明かす「誰も知らないピョンヤンの素顔」

2019年の論点100

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取材に対して「しめつけがキツくなっている」

 ただし、当局はまだまだ私たちの取材に対しては厳しい姿勢です。いや、どちらかと言えば、しめつけがキツくなっていると言っていいでしょう。特に、政府・当局者がインタビューを、なかなか受けてくれなくなっています。在平壌の大使たちに対しても、規制が以前よりも多いと聞いています。国営メディアの首脳会談の報道ぶりも、非常に注意深い。流動的な状況のなか、誰もが「勇み足」を恐れているのだ、と思います。

平壌 ©共同通信社

 9月9日の建国70周年の軍事パレードと南北首脳会談の取材で多くの外国人記者が北朝鮮に行きました。その報道ぶりは、当局の計画通りでしょう。特に、パレードには、弾道ミサイルの姿はなかった事が世界中に大々的に報じられました。トランプ氏がすぐツイートして、金氏に感謝を示しました。マス・ゲームの復活についても、世界のメディアがその驚くべきスケールと不思議な「社会主義リアリズム」の美学に注目し映像が流れました。ここでも、高官のインタビューや会見などは一切ありませんでした。しかし、なんとなく北朝鮮政府の気持ちの余裕が見える気がします。

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 国の安全保障はもちろんですが、経済開発は北朝鮮の国民の期待でもあります。この国民感情が必ずしも「非核化」につながるかどうかは疑問がありますが。

筆者・エリック・タルマジ氏(AP通信社平壌支局長) ©文藝春秋

 日本にとっては、これからがチャンスだと思います。流動的な状況であるからこそ拉致問題や短中距離ミサイルによる安全保障問題を直接話して、国益を主張する場を作ることができます。そうしないと、逆に除け者になる恐れがあります。それでは、平壌の思う壺です。今後の北朝鮮情勢が、どう展開するかは誰にも予想できません。でも、この交渉を誰よりも息を止めて見守っているのは、北朝鮮の国民である、と私は思います。

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