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「第2志望でも納得できない病」で中学受験の親子が“壊れる”

「中学受験残酷物語」が生まれるメカニズム

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笑顔で終われる家庭の共通点とは?

 結果の如何に関わりなく、「中学受験をして良かった!」と笑顔で終われる家庭には共通点がある。

「6年生の冬、いよいよ大詰めというころ、誰に言われるでもなく自分から机に向かい、目の色を変えてがんばる息子の姿を見たとき、『ずいぶん成長したなぁ』と涙が出そうでした。その時点で中学受験をして良かったと本気で思えてからは、合否が怖くなくなりました」

 合否という結果よりも、中学受験という機会を通した子供の成長そのものに目を向けているのだ。

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 子供が第1志望まっしぐらにがんばるのはいいことだ。高望みだってどんどんすればいい。しかし親まで合格という結果ばかりを見ていると、いま、目の前で努力する子供の成長に気付けなくなることがある。

©iStock.com

ありのままの子供を受け入れる

 小学4年生で塾に通い始め、小学校では習ったことのないような難問にもあきらめずに取り組むようになる。テストの結果に一喜一憂し、「次はもっとがんばるぞ!」などと目標を立てたりするようになる。親の期待だってひしひと感じている。「親を喜ばせたい」という気持ちも当然もっている。しかし、親が「結果がすべて」と思っていたら、これらの成長は合格という形でしか報われない。

「いま、ここ」での子供の努力と成長に目を向け励ますことを、中学受験を志す子の親は忘れてはならない。それを忘れなければ、前述の母親の言葉通り、合否が怖くなくなるはずなのだ。「成績が上がってほしい」と切実に願う一方で、「成績が上がらなくても、この子が精一杯がんばって力を出し切れるのなら結果はどうでもいい」と心の底から思えるようになる不思議な体験をするはずだ。

 それはすなわち、ありのままの子供を受け入れられるようになったということである。それが、親子で中学受験を経験することの最大の効能だと私は考えている。

中学受験「必笑法」 (中公新書ラクレ)

おおた としまさ(著)

中央公論新社
2018年12月7日 発売

中学受験に「必勝法」はないが「必笑法」ならある――。他人と比べない、がんばりすぎない、子供を潰さない、親も成長できる中学受験のすすめ。
 

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