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手配師が語った「今、“振り込め詐欺”の現場は中国にある」

2018/12/17

 ある日の夕方、歌舞伎町の地下のカフェで、2人の男性の打ち合わせの場に立ち会わせてもらった。打ち合わせの目的は、中国に人材派遣を行うことだ。

 手配師のA氏が、“中国で行う振り込め詐欺”のかけ子(振り込め詐欺などの犯罪で、電話をかけてだます役)を3名用意して欲しいとスカウトマンのB氏に依頼していたのである。かけ子は3人グループで仕事をしており、その中には、女性も含まれているほうが成功率も高いということで、普段は風俗などで女性を扱っているスカウトマンに声がかかったのだった。

©iStock.com

「3人単位で渡航してもらいたいのだが、その3人は友人や知人である必要はない」

 と手配師の男性A氏は言った。

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 被害が後を絶たない特殊詐欺。90年代後半から始まった「母さん、オレオレ」という電話が特徴的だった詐欺事件は、古典的な詐欺の手口ではある。しかし、携帯やコンビニATM、インターネットというツールを使いこなす若者グループ中心だったことに目新しさがあり、2003年~2004年頃に「オレオレ詐欺」という言葉が被害と共に広がった。以降、当局とのイタチごっこによりその手口は変容していき、いまや特殊詐欺は国を跨いで行われる事件になりつつある。今回、当事者を取材することによって複雑化するこの劇場型詐欺の実態の一端が分かった。

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最低3カ月、中国での滞在が必要

 A氏が出した渡航における条件は次の通り。

 報酬は1カ月30万円保証で日本帰国時に精算。詐欺が成功すればインセンティブが付き、保証給に上乗せされる。3カ月間で、300万~500万円の報酬はざらで、中には1000万円に届く人もいるという。

 ただし、マニュアルを覚えてある程度の結果が出るまでに時間がかかるため、最低3カ月の滞在が必要だ。この3カ月が経ったらいつでも帰ってもよく、中国に着いたらすぐに仕事を始めて欲しいとのことだった。

 私は、A氏にもう少し詳しく話を聞かせて欲しいと頼み、後日の取材を承諾してもらった。

 翌週、私は再びA氏と新宿の街にいた。A氏の前職は無店舗型JKお散歩店の幹部で、秋葉原の街で働いていた。だが、JK店に摘発の嵐が押し寄せたため、そのタイミングで手を引いた。その後は数年間、コーディネートの仕事や配信用アダルト動画の自主制作および販売などをしてきた。

「高校在学中からキャバクラなどでバイトを始め、以来ずっと風俗や裏カジノのスタッフなどアングラ系の仕事をしてきました。こういう仕事は、だいたい知り合いの紹介で入りますね。合わないなと思ったらすぐ辞めちゃいますが、いくらでも他の仕事もあるんで……」

取材に応じるA氏 筆者撮影 

 今回の“中国で行う振り込め詐欺”の仕事も、これまでに培ってきたネットワークの中で入ってきたという。

「俺、LINEのグルチャ(グループチャット、限られたメンバーでチャットできる機能)に6~7個入ってるんですよ。そこにいろんな案件が流れてくるんです。99%はどうしようもない情報商材系の詐欺案件ですが、中には1%くらい『今日、うちの店でスポットでバイトしてくれるキャストさん募集』みたいなまともな仕事もあるし、買い物代行のような面白い仕事もあるんですよ」

――買い物代行って、まさかただの家事代行のようなことではないですよね?

「そうですね。転売目的の洋服や服飾アイテムを買うんです。行列必至の人気ブランドの店に並んで抽選で当たったら代理で購入するんですよ。購入するものリストがメモに書かれていて、指示された通りに買ってくるだけなんですけどね。転売ヤー(転売屋)ってこうやってレアものをゲットしてるんだなとわかりました」