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手配師が語った「今、“振り込め詐欺”の現場は中国にある」

2018/12/17
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1日中LINEの通知が鳴っているような状況

――これまでにLINEグループの情報によって、Aさんがやった仕事があったら教えてください。

「iPhoneの転売は仲間数人とやりましたね。知人が流してる情報だと、付き合いでクラブイベントのスタッフはちょいちょいやりますよ。あと、これは仕事ってほどでもないんだけど、出張で台湾や中国に行くことがあるんですね。現地で口座を作りたい人って結構いるんですが、その作り方のノウハウを共有したりもしてるかな」

 他にも、不動産の売買や投資情報なども入ってくるという。多いグループだと200名を超すため、1日中LINEの通知が鳴っているような状況だと、A氏は苦笑いした。

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――そういうグループって、どうやったら入れるんですか?

「ビジネス交流会で知り合った人などから誘われて入ることが多いですね。この仕事のグルチャは、JK店時代に一緒に仕事してた仲間から誘われて行った交流会で知り合った人から教えてもらいました」

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「その情報を流していた人に、まずは個別でLINEするんですよ。この仕事の場合は、『責任者を紹介する』と言われ、連絡をとったところ『直接電話で説明します』とのことでした。電話といってもWeChat通話ですよ。国際電話は高いですから。中国語っぽい訛りのある口調で、日本人じゃなさそうでしたね」

「WeChat」とは、中国語では「微信」と書き、中国圏でよく使われているアプリだ。機能はLINEと同じ。通話は無料となる。

――電話口の人とは会ったのですか?

「いえ、電話では何度かやり取りさせていただいてますが、直接会ったことはありません」

――LINEでの内容ってだいたいのことしか分からないじゃないですか。実際に仕事をするとしたら、どんな流れで話がまとまっていくんですか?

 つまり、こういうことだ。LINEグループに流される情報に興味を持ち、その情報を流していた人へ個別に連絡を取ると詳しい方法が教えてもらえる。その後はLINEやWeChat、またはテレグラムといったアプリを使って別のグループと繋がり、仕事を行うチームが作られていく。

 かけ子、受け子(被害者から現金を受け取る役目)、出し子(ATMから現金を引き出す役目)、リクルーター(手配師A氏の役目)がそれぞれ異なるグループに属することで、組織が複雑化する。それによって、自分が担当した仕事以外の部分は見えにくく、末端の人間は上層部を知らずに仕事を行うことになる。

 それは、トップの人間にとっては口を割られにくいというメリットにつながる。

早い人だと数日で結果が出せるようになる

「早い人だと数日で結果が出せるようになるけど、グループ内の組み合わせにもよるし、個人差があるから、どれくらい確実に稼げるかは、なんとも言えないですね。旅費と宿泊費、食事代は向こうが全て出すので、それらの経費と相殺するためにも最低3カ月が必要という計算になるとのことでした。これは今までの積み重ねで、期間が出ているようです」

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――じゃあ、3カ月経たないで帰ってきちゃった場合は、Aさんの報酬がないんですね。

「そうなりますね」

 A氏の報酬は、3人まとめて人を紹介し、そのグループが稼いだ金額によって歩合で紹介料が入ってくる。しかし、人を紹介しても、その人たちが働かないとA氏には一切入らない完全出来高報酬だ。とはいえ、知り合いに声をかけ、業務内容を説明し、了承を得たら空港に連れていくだけで数十万~100万円単位の報酬が得られるとなったら、非常に割りのいい仕事である。