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「太りすぎ」も「やせすぎ」も「ひざ」によくない理由

100歳になっても自分の足で歩くための「ひざトレ」とは?

2018/12/13
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太っていてもひざ痛にならない条件

 ただし、太っていてもひざ痛にならないこともあります。それは、太ももなど脚(あし)の筋肉の状態によります。脚に体重を支えるだけの十分な筋力があれば、太っていてもひざ痛を防ぐことができるのです。

「歩いているときにひざに一番衝撃が加わるのは、かかとが地面に着いた瞬間です。このとき、脚の筋肉を鍛えておけば、かかとが地面に着く瞬間に太ももの筋肉が収縮してひざを持ち上げ、衝撃を和らげてくれるのです。まさに、脚の筋肉はひざの『天然のサポーター』の役割を果たしているのです」(同)

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 反対に脚の筋肉が衰えていると、ひざに衝撃が加わりやすいのです。実際、戸田医師が45歳から69歳までの変形性ひざ関節症の人117人と、同じ年代のひざが痛くない人118人を比べた研究によると、変形性ひざ関節症の人は体重に対する脚の筋肉の割合が明らかに低いという結果だったそうです。

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モデル体型の若い女性は年を取ってから要注意

 実は、この筋肉の衰えが「やせすぎ」によるひざ痛のリスクと関連しています。みなさんは、「サルコペニア」という言葉をご存知でしょうか。ギリシア語で筋肉を表す「サルコ」と喪失を意味する「ペニア」を合わせた造語で、日本語で「筋機能低下症候群」と言います。

 人間は筋肉の衰えを放置していると、20歳頃をピークに1年に1%ずつ筋肉が減っていくと言われています。つまり、何も対策しないまま50年が経ち70歳になると、筋肉がやせ衰えて20歳の頃の半分(50%)になってしまうのです。

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 サルコペニアになると歩く速度が遅くなったり、転倒して骨折しやすくなったりして寝たきりにつながるために、近年、高齢者でとくに注目されるようになりました。ですが、高齢者だけの問題でもありません。65歳以上の日本人1000人を対象にした研究で、中年時代に運動習慣のあった人はなかった人に比べ、明らかにサルコペニアになりにくいというデータもあるからです。

 つまり、若いときに運動せずにダイエットだけをしてやせてしまうと、年をとってからサルコペニアになってしまう危険性があるのです。モデル体型に憧れて、「細長い手脚になりたい」と過度なダイエットをしている若い女性は、とくに要注意と言えるでしょう。

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 そして、このサルコペニアが、ひざ痛にもつながるのです。戸田医師が続けます。

「脚の筋肉が衰えると、ひざを伸ばす筋力が弱くなってしまいます。ひざを曲げたまま歩いていると、地面からの力を体全体で受け止められなくなって、ひざに集中してしまいます。それによって、ひざの軟骨や半月板を傷めてしまうのです」

 太りすぎてもやせすぎても、ひざにはよくないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。高齢になってやせ過ぎると、衰弱して寝たきりや死亡のリスクが高まることも知られています。ですから、やせすぎの人は逆にしっかりカロリーを摂るようにしましょう。