今でも通用する日本政治の“文法書”/『日本の政治』京極純一

ベストセラーで読む日本の近現代史 第68回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官
ライフ 社会 政治

 外国の友人から「日本の政治はわかりにくいので解説してくれ」という依頼がときどきある。最近、ロシアの友人とこんなやりとりがあった。

 ロシア人「自民党の二階俊博幹事長や加藤勝信総務会長が安倍晋三首相の4選の可能性について述べているのに対して、安倍氏自身は否定している。どう解釈したらよいか」

 佐藤「国会における安倍首相の答弁についてはこう報じられている。

〈安倍晋三首相は(三月)一四日の参院予算委員会で、自身の自民党総裁四選の可能性をめぐる発言が党内から出ていることについて、『自民党の規約によって4選は禁じられている。党総裁としてこのルールに従うのは当然のことだ』と答えた。/日本維新の会の片山虎之助氏の質問に答えた。/首相は『三選を果たしたばかりで、私にとって最後の任期を全力で結果を出していくことに集中していきたい』とも述べた〉(「朝日新聞デジタル」3月14日)

 政治家の言語には独自の解釈法がある。安倍氏はここで『私が次の総裁選に出馬する可能性はゼロだ』とか『次の総裁選に立候補することはない』とは言っていない。党則を改正すれば4選は可能である」

領土交渉と安倍4選

 ロシア人「北方領土交渉と関係しているか」

 佐藤「関係していると思う。去年11月14日のシンガポール日露首脳会談後、首相の側近たちは、歯舞群島と色丹島の2島返還プラスαで北方領土問題の解決が2019年中にも行われるとの感触を得て、同年7月に予定されている参議院議員選挙にあわせて衆議院の解散を行い、衆参同日ダブル選挙を行う可能性について研究し始めた。ダブル選挙になれば、野党間の足並みが乱れ、自民党と公明党が圧勝するという計算も働いた。しかし、今年に入ってからロシアが遅延戦術を取り始めた。とりわけ交渉の窓口であるロシア外務省が露骨な遅延工作に腐心している。外交交渉には相手がある。日本の都合だけで、タイムスケジュールを決められない。また、種々の世論調査から判断して、7月の参議院選挙で与党が大敗するシナリオはなさそうだ。これらの事情を総合的に判断して、安倍首相を含む現政権幹部が、北方領土交渉に関して、ずっしり腰を据えて、2〜3年、時間をかけて取り組むという方針をとるようになった。このことが安倍4選に向けた要因になっていると思う」

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source : 文藝春秋 2019年5月号

genre : ライフ 社会 政治