あるものをない、と虚言で取り繕い、あとから弥縫策がばれて泡を喰う。森友・加計問題の国会答弁を例に引くまでもなく、この1年あまりの政権運営は、見るも無残な状態が続いている。財務事務次官・福田淳一のセクハラ問題の対応なども、まさにその典型といえた。
「(被害者が)弁護士さんに名乗り出て、名前を伏せておっしゃることが、そんなに苦痛なのか」
財務省官房長を務める矢野康治のこんな国会答弁などは、耳をふさぎたくなったほどだ。
財務省の事務方トップによるセクハラ騒動は、その実、個人のスキャンダルに過ぎない。「週刊新潮」の記事が4月12日に出た段階で潔く辞任表明すれば、政権へのダメージはここまで大きくなかったはずである。その後音声データが出るのは誰でも予想できた事態であり、問題を大きくしたのは、紛れもなくその対応の拙さというほかない。
雑誌の発売から週をまたいだ4月16日、産経新聞が朝刊1面で「福田財務次官 更迭へ」と報じたことがあった。永田町では、この記事を誘導したのが、首相の政務秘書官である今井尚哉(たかや)(59)だと伝えられる。だが、政府対応はその後もますます迷走し、辞任表明までなお2日を要した。
安倍政権の屋台骨を支えてきたといわれて久しい今井は、森友・加計問題で揺れ続ける国会において、野党から疑惑解明のキーパーソンと目されている。第1次政権時に広報も担当する事務秘書官として安倍に仕えた。政権が倒れ、失意のどん底にあった前首相との山登りにも付き合い、政権にカムバックさせた功労者の1人として知られる。いわゆるお友だち内閣の要である。
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source : 文藝春秋 2018年06月号