橋田「死の選択は自分でしたいんですよ」
鎌田「賛成です。でも法制化には山があります」
鎌田 橋田さんの「私は安楽死で逝きたい」(本誌2016年12月号)読みましたよ。
橋田 90歳になって初めて真剣に考えたんです。それまで死ぬなんて考えたこともありませんでした。仕事がだんだんなくなって来て考えることがなくなったら、「あ、もうすぐわたし死ぬんだ」って死ぬことについて考えた。そのとき、せめて死ぬ選択は自分でできないかなと思っただけなんです。
鎌田 最期のときくらいは自分で決めたい、という気持ちはよくわかります。僕は諏訪盆地で地域医療を43年やってきて、患者の命は医者などの他人が決めるのではなく、自分で決めたほうがいいと考えるようになりました。僕がいちばん守ってきたのも、患者さんの「こうしたい」という気持ちに添うことなんです。だから橋田さんの考えには賛成ですよ。
橋田 私はいま幸せとも不幸とも思っていませんけど、いつ死んでもいいなと思っている。もう、やりたいこともないんです。来週から飛鳥Ⅱでアジアクルーズに行きますけれど、別に行かなくてもいいんです。
鎌田 なるほど。
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source : 文藝春秋 2017年03月号